研究実績の概要 |
光化学的な手法による「直接的」なCO2 → MeOHを目指した方法を検討したが、まだギ酸(HCO2H)もしくは一酸化炭素(CO)の形成しか確認できていない.ギ酸が形成されその生成量が最大値を打ったあとに水素放出なし(CO2へと戻る逆反応なし)で,ギ酸量が減少していることから,MeOHの形成が示唆された.これらの実験は様々な(P,N,N,P)型配位子と異なる金属殻をもつ錯体群(30種類程度)を我々独自の方法で合成し行った.それぞれの錯体を「可視光とアルコール(電子源かつ水素源)」を用いて活性化し,その結果発現する触媒活性の優劣を,CO2の還元を検証の場として評価してきた.最終的には(株)豊田中央研究所の森川健志博士や佐藤俊介博士が率いる研究チームとの共同研究へとつながった.これら錯体群の一部はCO2の還元活性を室温で明らかに示し,CO2からCOやHCO2HがTON = ~20程度で形成されることはH26年度中に証明できた.新知見が得られたが問題点も浮き彫りになった。すなわち光増感剤を必要としない系も開発できることがわかったが,主に錯体の分解によってTONが頭打ちする傾向にあることも明らかとなった.今後これら錯体の光照射下における構造的安定性を獲得するための新しい錯体分子設計が必要である.一方で,酸化還元電位とCO2還元能との関係を明らかにするうえでの土台となる萌芽的成果が多数得られたため,今後CO2を資源化するうえで大きな成果へとつながることが期待される.
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