研究課題
ヘリセンはらせん構造を有する生得的にキラルな興味深い化合物である。その比旋光度や円二色性(CD)は特異的に強い値を示すことから、不斉合成や超分子構造体の基盤構造などとして興味が持たれている。これまでに多数のヘリセン分子が合成、報告されているが、置換基導入などによって構造上のひずみや電子的効果を加えても、らせん軸方向の1Bb遷移のCD強度はほとんど変化しないことが明らかとなっている。戦略的な物性制御のためにはCDの支配因子、すなわち電子遷移モーメントと磁気遷移モーメントの強度および方向の制御が必須である。もともとヘリセン類のCDはかなり強いが、例えば[6]ヘリセンの二つの遷移モーメントは約70度の角をなしている。さらに強力なCDを示すようにするためには、ふたつの遷移モーメントのなす角を0度または180度とすし、余弦値を最大理論値の1とするとよい。具体的にはらせん軸に沿ってC2対称軸を有するダブルヘリセン2種を設計し、合成した。両化合物、ならびにトリプルヘリセンのキラル分割を行いそのCDスペクトルを測定し、理論的な予測を実証することができた。成果は、基礎有機化学討論会などの学会発表のほか、チェコでのChirality 2014国際学会、北京でのMolecular Chirality Asia 2014国際学会などでの招待講演で紹介する機会を得たほか、業績リストに示すような国際誌で報告した。
成果の詳細は、以下のHPリンク「最近の論文」などに記されています。大学HP(分子相関化学領域)http://www.chem.eng.osaka-u.ac.jp/~inoken/
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 謝辞記載あり 9件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件) 図書 (2件)
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