研究実績の概要 |
独立したπ共役平面の共役系拡張法は、従来ではそれぞれの共役部位を平面構造にする手法が主であった。しかし、実際上取り扱いが困難であることや、バリエーションのスルースペース効果により非平面のまま共役系の拡張を行うことを目的とし、以下の結果が得られた。 ナフチルベンゼンにおける酸素の効果の原理探求 ナフチルベンゼン無置換体は、二つのπ平面が共有結合で連結されているが、二面角が約60度の傾きを持っており共役系同士のつながりはない。この化合物のペリ位にOH基を導入した化合物の発光波長は無置換体に対し70 nmもの長波長シフトが見られた。一方、パラ位にOH基を導入した化合部では、34 nmの変化しか見られなかった。光照射により酸素からアリール骨格への電子移動が起こり、OH基がプラス性を、ベンゼン環がマイナス性を帯びる。これらの静電的な効果により、ビアリール骨格がより平面を向きやすくなることで共役系が拡張され、発光波長が変化していると考えられる。 ナフチルベンゼンにおけるヘテロ原子効果 以上の知見より、酸素を窒素に置き換えた化合物を合成し、発光挙動を検討したところ、窒素上の置換基により、緻密に発光波長を制御することができた。おもに、電子吸引基を窒素上に有する化合物では大きな長波長発光がみられた。 金属との連結型化合物への応用 ベンゼン環の1,3,5位にαナフチル基を有するトリオール体とBuLiを作用させると、リチウムと酸素が交互に並んだ正六角形型のダブルデッカー錯体が得られた。これは、リチウムフェノキシドのヘキサゴナル形を選択的に合成する世界で初めての例である。配位子の交換挙動を観測し、これらの相互作用の様子を明らかとした。
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