研究課題/領域番号 |
24655032
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
神戸 宣明 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60144432)
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研究分担者 |
岩崎 孝紀 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50550125)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 不斉触媒 / 有機触媒 / ハロゲン化 |
研究概要 |
本研究では、入手容易なアルコールを原料に、アルコールの両鏡像体を光学認識しそれぞれ異なる反応機構を経由し、立体保持、立体反転を伴ってハロゲン化する事により、光学活性な有機ハロゲン化物へと導く新規不斉合成手法の開発を目的に種々検討を行った。最初に種々の光学活性アミン触媒を用いてラセミ体のフェネチルアルコールをチオニルクロライドでクロロ化し、その立体選択性について精査した結果、最大で20%程度の光学収率で対応するクロロ化物が得られた。 そこで、反応の詳細を明らかにする事を目的に、光学活性なアルコールを基質に用い、種々のアミンを添加して検討を行った。その結果、アミン塩基の構造の差異によって生成物の立体が大きく影響を受ける事を明らかとした。すなわち、ピリジン誘導体では、概ね立体反転を伴って反応が進行するのに対して、2級アミンでは立体保持での反応が優先し、3級アミンではラセミ体を与えた。一方、嵩高い3級アミンでは立体保持の生成物を主に与える事がわかった。いずれの場合も反応により光学純度の低下が見られたが、添加剤したアミンの構造と生成物の立体選択性の傾向は、求核性を有する塩基を添加した場合にはSN2機構を経て立体反転で、求核性の低い塩基ではSNi機構を経る立体保持で反応が進行すると言う作業仮説を支持するものである。 本反応では、不斉の二級アルキルハライドの合成手法が開発されると期待されることから、その応用を目指してアルキルハライドを用いる合成反応の検討も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の作業仮説では、ピリジンのような求核性塩基を触媒として用いると、チオニルクロライドによる2級アルコールのクロロ化反応がSN2機構で進行し立体反転生成物が得られる事、および嵩高い3級アミンを用いるとSNi型の反応により立体保持生成物が得られることを想定していた。上記の如く、光学活性なアルコールを原料として用いたところ、添加するアミンの構造の違いにより明確な立体選択性の変化が見られ、作業仮説と矛盾ない実験結果が得られた。 今回用いた反応条件では、いずれの場合も50%程度のエナンチオ過剰率の低下が起こる事がわかった。これは、本反応の条件下では、用いるアミン添加剤による反応機構の制御が完全ではなく、二つの反応機構が競争的に進行している事を示していると考えられる。今後は、反応条件の最適化を行い選択性を向上させることにより、有機ハロゲン化物の新規不斉合成手法となり得ると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
上記の如く、作業仮説の妥当性を確認するに至った。今後は光学収率の向上に取り組む。具体的には、当初の目的を達成するためには、アルコールの鏡像体に対して求核性の異なる求核性をしめすアミンを適切に選択することが必要である。前半は、様々な光学活性アルコールを用いて反応条件の最適化を継続する。また、現在ハロゲン化剤としてチオニルクロライドを用いているが、類似の反応機構で進行すると考えられる、三塩化リンなどの他のクロロ化剤についても併せて検討を行う。 このような反応条件の選定後、種々の光学活性アミン触媒を網羅的に検討し、アミン触媒の構造と立体選択性の相関を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
生成物の分析および光学収率の測定は研究室既設の分析装置を用いて行う。本研究費は、主に、反応に必要な光学活性試薬等の購入に充当する。
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