研究課題/領域番号 |
24655033
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松原 亮介 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90401223)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | レブリン酸 / デルタアミノレブリン酸 |
研究概要 |
現在、化学的手法、微生物発酵法など、種々のデルタアミノレブリン酸(DALA)の製造法が報告されているが、最も直接的であると考えられるレブリン酸からの化学合成法は、全体的に低収率であることに加えて、製造工程において当量以上の廃棄物を生じるためにコストがかさみ実用的ではなく、従来法の限界を示している。レブリン酸は、糖由来の、工業的に生産されているバイオマスの一つである。以上の背景のもと、本研究の目的は、当量廃棄物を生じることなくレブリン酸をDALAへ変換する新奇触媒系の構築することであった。 そのためには、炭素ー水素結合活性化が鍵である。我々はまず、そのうちの一つであるBarton反応に着目し、酸素ラジカルを経由した炭素ー水素結合活性化法の開発に取り組んだ。しかしながら、目的とする反応は進行しなかったため、次に超原子価ヨウ素を用いる酸素ラジカル発生法を試した。しかしながら、この反応においても目的とする反応は進行しなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
残念ながら現在目的とする反応は達成できていない。いくつかの要因は考えられるが、一つは発生した酸素ラジカルの反応性が思った以上に十分ではないという点である。酸素ラジカルは一般的に、炭素ラジカルと比較すると反応性が高く、隣接する炭素ー水素結合を切断し炭素ラジカルを発生させることが可能であることが知られている。しかしながら、その酸素ラジカルの近傍にヘテロ原子などの電子吸引性基が置換すると反応性が低下することが分かった。一つの知見を得た結果であるが、レブリン酸からのDALA合成に際し酸素ラジカルを用いて行うのは困難であると言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は酸素ラジカルからの炭素ー水素結合活性化から離れ、鉄触媒を用いて同様の反応を試みる計画である。今年度の研究において酸素ラジカル経由の炭素ー水素結合活性化は、レブリン酸変換反応においては不適である可能性が示唆された。それを踏まえて、次年度では、酸素ラジカルを発生することなく炭素ー水素結合活性化が可能であることが知られている鉄触媒に焦点を絞る。鉄触媒のなかでも、近年Whiteらが開発した4つの窒素原子により配位安定化された鉄触媒を検討に用いる予定である。配位子が多段階を経て合成されているため、その合成を早急に行い、目的とする炭素ー水素結合活性化反応に試す予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は研究が思うように進行しなかったため、溶媒や薬品の使用量が予想よりも少なかった。次年度においては今年度行う予定であった有機合成を当初の計画に加えて行っていくため、薬品や溶媒の購入費として充当する。
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