研究概要 |
本研究の目的は,チオフェンデンドリマーで共役的に近赤外吸収増感色素を内包するアプローチを用いて,革新的「有機薄膜太陽電池用光捕集増感剤」を開発することである。平成24年度は,実施計画にそった目的色素の合成と関連機能の発現をねらった。 1. チオフェンデンドロンの合成とジブロモビス(イソインドール)メテンホウ素錯体との反応 R. C. Advinculaらの報告(Org. Lett. 2002, 4, 2067)を参考にチオフェンデンドロンの合成を開始し,第1世代および第2世代チオフェンデンドロンを得た。目的物の合成にあたって,色素骨格への導入の可否を検証するため,それぞれのデンドロンをスタニル化し,ジブロモビス(イソインドール)メテン色素とのクロスカップリング反応を実施したところ,チオフェンデンドロン-ビス(イソインドール)メテン共役体が合成できることがわかった。しかし,その共役体を用いて近赤外吸収特性の付与に欠かせないB,O架橋反応を試みた結果,目的色素を同定することができなかった。これを受けて,B,O架橋反応を必要としない類縁色素の合成をすることに変更した。 2. 色素増感太陽電池への展開 本研究では合成を主体におこなったために,いくつかの有用な中間体を得ることができる。その中間体から派生する機能性色素の開拓は研究資源の有効利用の観点から意義があるものと考えた。そこで,酸化チタンへの親和性をもつシアノアクリル酸を導入した関連色素を合成した。興味深いことに,得られた色素体を用いて色素増感太陽電池デバイスを作成した結果,約5%の光電変換特性をもつに至った。
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