有機系太陽電池の光電変換効率の向上を目指し,その達成に向けた努力が続けられている。その取り組みのひとつに有機色素の多彩性に着目した構造設計と合成がある。本研究では,長波長領域に強い吸収特性をもつボロンジベンゾピロメテン系色素をコアに誘導化をおこない,太陽電池用増感色素の創製とそのデバイス化に向けた検討を実施した。 1) 近赤外光吸収色素内包型チオフェンデンドリマーの合成;分岐オリゴチオフェンを結合させた目的物の合成に成功した。具体的には,世代毎に8T-Dye (第一世代)・16T-Dye(第二世代)・32T-Dye(第三世代)が調製され,その基本物性が調査された。いずれの色素も近赤外領域に吸収極大を示し,蛍光スペクトル特性についてデンドリマー特有のアンテナ効果が観測された。すなわち,紫外光励起において,世代数の増加に従いコア色素の蛍光強度が増加した。チオフェンデンドロン部位からコア色素への蛍光共鳴エネルギー移動の寄与を示唆している。このように分岐オリゴチオフェン導入に基づく光捕集効果が見出されたので,今後はデバイスに組み込んだ物性を評価していくことを計画している。 2)色素増感太陽電池用色素への適用:ボロンジベンゾピロメテン系色素について,有機系太陽電池への適応性を調べる検討をおこなった。具体的には,関連色素のジブロモ中間体を出発原料に,アクセプター性と酸化チタン結合性を併せ持つチエニルシアノアクリル酸部位の導入をおこなった。得られた色素体を含む電池デバイスを作成し,疑似太陽光を照射したところ,比較的高い短絡電流値が得られた。興味深いことに,光電変換効率が5%を超えるセルの開発に成功した。なお,改良の余地があるが,当該色素系の有機系太陽電池に対する有用性を示唆する結果として意義深い。
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