研究課題/領域番号 |
24655045
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平岡 秀一 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (10322538)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 自己組織化 / Pt(II)錯体 / キラル認識 / 多座配位子 |
研究概要 |
本研究では、光学活性なかご型超分子錯体をデザイン・合成し、これが高いエナンチオ認識をすることを目指す.本年度は、母骨格となる歯車状分子の合成とこれと錯体形成するピラー型の金属錯体を合成し、かご型超分子の形成、構造同定を行った。歯車状分子にはピラー型錯体を錯体形成し、かご状構造の形成に利用する配位部位と、分子認識に必要な官能基が階層的に導入されている。これらの官能基はともに窒素系の官能基であり、高い極性を有することから、分離生成に工夫が必要であるが、申請者らがこれまでに開発している合成手法により可能であった。この新規多座配位子とピラー型Pt(II)2核錯体を混合しかご型錯体の形成を試みた結果、デザイン通りに、かご型構造形成のために導入した配位部位と選択的に錯体形成し、6核かご型錯体を定量的に形成することをNMR分光、質量分析および単結晶X線構造解析から明らかにすることに成功した。結晶構造から、この分子はねじれた構造を有し、分子としてらせん性を持つことが明らかとなった。事実、NMR分光測定からもキラルティーを導入したかご型分子では右巻きと左巻きがジアステレオマーとなり、両者の存在を確認することに成功した。また、このらせん性は、溶液中で相互変換しており、動的な特性を有することも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キラル認識を行う超分子かご型錯体の設計では、構造構築部となる配位部位と分子認識に必要な官能基が必要である。しかしながら、これらの官能基はともに近い性質を示すことから、両者が金属イオンに対する配位部位となるため、分子人認識部位と金属音の錯体形成が優先すると、望む自己自己組織化体を選択的に得ることは困難となる。本研究では、2つの役割の異なる官能基を2つの同心円上に精密に空間配置し、これらの空間情報を使って、選択的に金属ー配位結合を形成しようとする分子デザインであり、これまでにこのような設計原理は無かった。本年度は、上記の設計指針の検証が最も重要である、これ自体が期待通りに進まない場合、分子デザインの大幅な変更が余儀なくされる。しかし、上記の通り、分子デザイン通りに、2種類の官能基が区別され定量的にかご型分子を構築できたことが、今後の高度なキラル認識を行える超分子錯体の開発に大きな成果となった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、デザイン分子である、かご型超分子の母骨格の構築に成功した。そこで、今後は、これらのキラリティーの導入、分子認識部位となる官能基の検討を進め、高いキラル認識能を持つキラル超分子の開発を進める。さらに、有望な超分子については、単結晶X線構造解析により、詳細な三次元構造の決定を進め、分子認識挙動の駆動力を調べる。さらに、らせん型構造のもつ動的特性が分子認識挙動に及ぼす効果についてもNMR分光により調査を行い、生体系に見られるキラル認識との比較等、今後の分子デザイン指針とした有用な知見の収集も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度同様、本年度も新規多座配位子の合成、分離精製、構造同定に必要な分光測定用の溶媒、セル類に充てられる。また、合成用の装置類の導入が必要になる可能性があるが、研究の進行状況を踏まえて判断する。
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