研究課題/領域番号 |
24655047
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
近藤 満 静岡大学, 機器分析センター, 准教授 (80254142)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | アニオンレセプター / アニオン除去 / アニオン検出 / 脱塩 / アニオン認識 / アニオン捕捉 / カプセル分子 / 呈色活性 |
研究概要 |
水溶液中で機能するアニオンレセプターの開発として、種々の置換基を導入したビスイミダゾール型の架橋配位子を合成し、水中でアニオンを捕捉したカプセルを形成するかどうか検討を行った。これらの架橋配位子は水に不溶であるにも関わらず、水溶液中で陰イオンを捕捉することが明らかとなった。これは、水中で機能するアニオンレセプターの世界で初の例である。 置換基にメチル基やビニル基のような疎水性の官能基を導入した場合は、生成するカプセル分子は水に対する溶解性が無いため、捕捉した陰イオンを除去する活性を示した。この除去には選択性が見られ、過塩素酸イオンとフッ化ホウ素酸、硝酸イオンなど、子供に有害とされる陰イオンを優先的に捕捉-除去する活性が確認された。その一方で、これらの陰イオンが存在しない場合は、塩化物イオンや硫酸イオンを捕捉-除去し得ることが明らかとなった。 また、置換基にヒドロキシル基のような親水性の官能基を導入した架橋配位子を用いた場合は、生成するカプセル分子は水に対してある程度の溶解性を示し、その結果、呈色指示薬として機能することが明らかとなった。この呈色活性は架橋配位子のサイズに依存した選択性を示し、これを利用することで過塩素酸イオン、硝酸イオンの目視による検出を実現した。 置換基に水素を用いた場合も水中で陰イオンを捕捉する活性が確認されたが、予想に反して、水にある程度の溶解性を示ことが分かった。このカプセル分子は、過塩素酸イオン、フッ化ホウ素さんイオン、硝酸イオン以外に、塩化物イオンや臭化物イオンも捕捉し、呈色することが分かった。これらの架橋配位子を組み合わせることで、水中の陰イオンを簡便に目視で検出できるカプセル分子を合成できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画で立案した化合物の合成を予定通り終え、目的とした活性の発現の有無を明らかにすることに成功した。いずれの架橋配位子もアニオンを捕捉するアニオンレセプターとしての機能を水中で発現しており、特に、架橋配位子を系統的に合成することで、これらを除去するアニオンレセプターと、検出するアニオンレセプターを見いだしている。さらに、検出感度を向上させる次年度の研究計画についても、余裕を持って取組める下地を築き、予備的な実験にも着手することができている。当初の計画以上に研究を進展させることに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度には、電荷移動遷移による発色を利用して、10μM以下の微量陰イオンを検出できるアニオンレセプターシステムを実現する。具体的には、チオシアン酸イオンをもつ銅錯体を合成し、アニオンレセプターの出発物質として利用する。過塩素酸イオンなどを捕捉したアニオンレセプターの生成に伴い、チオシアン酸が放出され、これをFe(III)イオンで発色させることで、10μM以下の陰イオンの検出を実現する。 また、骨格に陽イオンを捕捉するサイトを導入することで、アニオンと同時にカチオンを水中から除去するアニオンレセプター(イオンペアレセプター)を実現する。スルホン酸を導入しつつ水に対する溶解度が低い架橋配位子を用いることで、この機能を実現する。
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次年度の研究費の使用計画 |
合成実験で使用する反応試薬、有機溶媒、ガラス器具の購入に加え、ガラス器具の洗浄に用いる超音波洗浄機を購入する。また、アニオンレセプターと除去実験のためのアニオンやカチオンの秤量に使用する電子天秤を購入する。これらの研究成果はホスト-ゲスト化学シンポジウム、及び錯体化学討論会で発表するため、その旅費として使用する。また、新しく合成した化合物の同定に使用する大型機器の利用料の支払いと発表論文の投稿料(別釣り代等)に使用する予定である。
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