本研究期間内に免疫細胞膜上の抗原レセプターと抗原―抗体反応をする特異抗原決定基誘導体の化学合成が完了せず、免疫細胞型バイオセンサー電極の作製まで研究を進展できなかったが、これまでに合成する抗原決定基を超薄膜なアダマンタン自己組織化単分子膜(Ad-SAM)表面に効率よく化学修飾するためにクリック反応性官能基を有するAd-SAM膜物質の2種類を合成した。その一つは、アジド基を有するAd-SAM膜物質である。昨年度までに、金電極上に形成したアジド基を表面にもつクリック反応性Ad-SAM電極が過酸化水素を酸化するレドックスメディエーターとしてニトロキシラジカルのTEMPO-アセチレン誘導体をこのクリック反応によって効率よく化学修飾できることを電気化学測定より確認し、本研究の電極作製で有効に活用できるバイオ電極機能界面のプッラットフォームの一つであることを明らかにした。本年度は、もう一つのタイプのクリック反応性官能基としてチオール基を有するAd-SAM膜物質を合成した。これら2種類のAd-SAM膜物質を混合してダブルクリック反応性混合Ad-SAM電極機能界面を容易に形成でき得ることから、2種類の異なるクリック反応条件を制御することによって免疫細胞の特異的な固定化、そして特異的に接着した標的がん細胞から大量に分泌する過酸化水素を電気化学的に高感度計測するためのTEMPO等のレドックスメディエーターのAd-SAM表面への高密度な化学修飾が可能になる。今後は適切ながん抗原決定基を合成して免疫細胞型バイオセンサー電極の作製が実現できると期待される。また、このようなバイオ電極機能界面のプラットホーム構築技術は、電極サイズのナノ化をはかることによって単一細胞の高感度な局所計測と操作を可能にする様々なバイオナノ電極の作製へ応用できることから、金ナノ電極の簡便な作製法の検討を行った。
|