研究課題
細胞の膜融合や膜を介した情報伝達などの生命現象は主に膜タンパク質の寄与が大きく,その機能発現には生体膜のゆらぎやその原因の一つである膜張力が重要である。膜張力はµN/mオーダーであり,非侵襲で微小張力測定可能な測定法が求められており,その候補としてレーザー誘起界面変形分光法(Laser induced surface deformation spectroscopy;LISD法)がある。膜機能と生体膜の関係を調べる際に,実細胞では夾雑物を多く含むことから生体膜モデルを用いた研究が行われている。その一つである黒膜は,厚さ5 nm程度の自立型脂質二分子膜で,電気化学測定や蛍光観察による単一膜タンパク質の機能解明に利用されている。そこで本研究の目的は,LISD法による黒膜の張力計測を可能とし,様々な組成を持つ黒膜の張力を評価することである。LISD測定ではpump光の輻射圧によって黒膜を変形させる必要があるため黒膜で隔てた2つの水相にそれぞれ2 Mスクロース水溶液,2 Mグルコース水溶液を用いることで,比重差による屈折率差を設けた。本法では黒膜は鉛直方向に形成されるため,LISD測定では,pump光・probe光を同軸で水平方向から入射した。混合脂質溶液中のChol重量比を変化させ,黒膜張力の変化を計測した。PC:PE:Chol = 7:1:2(w/w/w)組成およびPC:PE:Chol =7:1:4組成の黒膜を作製し,LISD測定を試みた。その結果,張力値はそれぞれ7.4±0.3 µN/m,249±50 µN/mと見積られた。Cholは脂質二分子膜の流動性を低下させる作用があり,その添加は膜張力を増加させることが報告されている。今回,Chol比率が高くなると黒膜張力が34倍程度高くなるという結果となった。
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