水溶液中のウシ血清アルブミン(BSA)などのタンパク(分子量:42-173 kDa)について、界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)存在下に衝撃波による移動を試みたところ、移動距離は直線的にタンパクの分子量に依存して増加したが、同一タンパクでもSDS濃度の増加に伴って移動距離は減少し、SDSの臨界ミセル濃度以上で大きな移動距離の減少が観測された。これは、タンパク分子鎖とSDSとの会合したミセルを形成するためであると考えられるが、タンパクとSDSとの会合体ではタンパクの分子鎖が直線状に伸びた形状になることが報告されていることから、会合による分子量増加(>15 kDa、タンパク分子依存)による移動距離よりも形状変化による分子の断面積の減少による衝撃波との相互作用の減少が、移動距離を減少させるものと結論した。このことは、前年度に行った多糖類における移動距離の分子量依存性の結果と一致し、さらに以前に行った核酸オリゴマーの移動距離の分子量依存性の結果とも矛盾せず、タンパクのような3次元構造を取る高分子と多糖類や核酸のような1次元構造に近い高分子とでは、移動距離から分子形状の違いが判ることを示唆している。 その他の成果として、ポリエチレングリコール鎖の水溶液中の会合現象を強く示唆する信号を得た。これは、疎水結合のみの相互作用により分子鎖が会合するものと考えられ、期間終了後にも引き続き検討を行う。 以上の結果は、衝撃波により分子量測定を行うためには類似の高分子を用いた相対的測定が必要であるが、溶液系中での二量体などの検出やタンパクの変性などの生体高分子の形状変化の検出には有効であることを示している。今後、さらに移動距離の制度良い測定方法の開発により、簡便な分子量測定法となると考えている。
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