研究課題/領域番号 |
24655066
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
今坂 藤太郎 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), その他 (30127980)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ラゲール・ガウシアンビーム / 光ピンセット / 分析・計測 / 微粒子 / 細胞分析 |
研究概要 |
初年度は、目的であるレーザーの輻射圧を用いた微粒子の粒径測定法の開発のために、実験系の作製と基礎となる光の位相制御や微粒子の捕捉に関する研究を行った。 実験装置は、空間光位相変調器(SLM)と落射蛍光装置を用いて、光の位相を変調しながら、微粒子にレーザーを照射することのできる光ピンセット装置を作製し、これを用いた。 SLMは液晶で構成される光の位相を変調する装置であり、ガウシアンビームの位相を変調することでラゲール・ガウシアンビームを生成した。SLM上に表示するパターンは、適切な位相変調量を与えるために表計算ソフトで計算して作製した。得られたラゲール・ガウシアンビームを落射蛍光顕微鏡に導入し、対物レンズで集光することで顕微鏡において観察中の微粒子に照射した。微粒子はレーザー光の輻射圧によって捕捉され、かつ、微粒子はラゲール・ガウシアンビームから角運動量を受け取り、捕捉されながら顕微鏡視野下で円運動を行った。このときの円運動の半径は異なる粒径の微粒子でも同じ半径であった。 次に、ラゲール・ガウシアンビームと同軸にガウスビームを顕微鏡へ導入し、微粒子へ2つの微粒子を照射した。2つのビームを照射しているとき、微粒子はガウシアンビームによって円の中心に、ラゲール・ガウシアンビームによって円の円周上に捕捉された。この状態からラゲール・ガウシアンビームによる照射のみ行うと、円の中心に捕捉されていた微粒子は円周上へ移動した。このことから、レーザーが微粒子を捕捉する力は粒径の2乗に比例するため、微粒子を1つのビームによって捕捉し、もう1つのレーザーを出力を調整しながら照射すれば、小さな微粒子を捕捉したまま大きな微粒子の位置を変化させることができる。この原理に基づいて、微粒子を粒径によって分離することが可能であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究実施計画は、実験装置の作製と2つのビームによる微粒子の捕捉実験であった。 実験装置の作製に関しては、空間光変調器での位相制御を行う系や、顕微鏡へのレーザー光の導入部などを作製し、概ね予定通り達成できた。 微粒子の捕捉実験に関しては、ガウシアンビームとラゲール・ガウシアンビームそれぞれでの捕捉及び駆動は行えた。しかし、2つのビームによる捕捉の状態から微粒子の粒径の差を検出するための実験にまでは至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は初年度に得た結果を基にして、微粒子の粒径測定装置の性能評価を行う。 試料として、初年度に使用したポリスチレン微粒子とは異なる屈折率を持つ、シリカやPMMAなどの微粒子を用いて実験を行い、微粒子の屈折率が粒径評価に与える影響を調べる。また、溶液の温度や粘度等、微粒子の粒径評価に影響を与える因子を調査する。さらに、本手法が適用できる粒子径の限界についても明らかにする。 次に、細胞の評価技術への応用を行う。微粒子の代わりにガン細胞を試料として用い、本手法により粒径(平均粒径)を精度よく求める。さらに、培養により細胞が増大する様子を定量的に評価する。一方、細胞中のDNAを蛍光プローブで標識して存在量を求め、細胞の増殖過程とDNA量の相関を調べる。これにより本手法が細胞周期の判定に利用できることを示す。
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次年度の研究費の使用計画 |
レーザー光を顕微鏡に導入するための落射蛍光装置内の蛍光フィルターは消耗品であるので、その交換費として使用する。 シリカやPMMAなどの微粒子の購入費として使用する。また、細胞培養で使用する培地や血清、抗生剤などの消耗品の購入費として使用する。 外国語論文の校閲費として使用する。 研究結果を、第73回分析化学討論会、ASIANALYSISにて発表するため参加費、旅費として使用する。論文を執筆するための学会誌投稿料として使用する。
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