研究課題/領域番号 |
24655067
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
早川 滋雄 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00156423)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 質量分析法 / 負イオン化法 / アルカリ金属 |
研究概要 |
電荷逆転質量分析法を開発している途中で、イオン化エネルギーの低いアルカリ金属を用いると表面での電子移動が起こり、アルカリ金属は正イオンとなるが他の付着した物質が負イオンとして生成していると考えられる現象を見出している。アルカリ金属のイオン化エネルギーは、単体としてはCs: 3.89 eV, Rb: 4.56 eV, K: 4.14 eV, Na: 5.34 eVであり、これだけのイオン化エネルギーでの気相反応では、通常の分子が負イオン化するには大きな吸熱エネルギーとなり、熱力学的な説明ができない。しかし、アルカリ金属は当然金属種であるために、フェルミ面が生成するように表面上で金属としての性質を示す時に原子のイオン化エネルギーより非常に小さな値を示す可能性がある。現時点で化学的物理的に説明はできていないが、非常に興味ある現象でありイオン化法としての応用に関しての可能性も非常に大きいため、新規な非解離型高感度表面電離負イオン化法としての可能性の追求している。その開発をするとともに、その化学的基盤を明確にすることも視野に入れている。アルカリ金属が付着した表面で負イオンが非常に効率よく生成する観測結果を質量分析法のイオン源として実際に利用できることを実証することを目標とし、現在イオン源の開発に取り組んでいる。その開発してイオン源を質量分析装置に装着し、イオン化できる化学物質の種類、イオン化効率、化学物質導入の方法などを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルカリ金属の導入が可能となるいくつかのイオン源を作成中である。表面での負イオン生成反応を質量分析法のイオン源として利用できることを明確にするために、現在保有している質量分析装置のイオン源と同様に設置可能で、アルカリ金属が導入可能なイオン源を作成している。本イオン源を取り付け可能なより性能の高い質量分析装置がリユース品として導入ができたため、低分解能の質量分析装置に対して試作していたイオン源との基本的な設計変更はないが、取り付け電極の位置などがことなるので、そのための設計変更を行っている。質量分析法のイオン源は、通常数kVの高電圧に浮いているため、アルカリ金属を導入しても、高電圧がリークしないような装置構成と条件を作るための設計と部品などの購入を行った。また、表面でのイオン化法と規定できるようにアルカリ金属を金属表面に真空中で薄く蒸着するための試作と検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今回、リユース品ではあるが、開発したイオン源を取り付けて負イオンの生成効率や生成種を高分解能で調べる事が可能な磁場電場磁場電場からなる日本電子製JMS-700T型のセクタータイプMS/MS質量分析装置を設置することができた。本装置の入手まではイオン測定に関して低分解能で行う計画であったが、本装置を活用して高分解能での負イオン源の性能確認を行うことが可能となった。本装置は、負イオンの加速と検出が可能であり、従来計画より詳細の検討ができるようになった。質量範囲も0~6000で使用できるため、生体分子などの高質量の分子のイオン化が可能かどうかも検討できるようになった。実験が安全に行える状態での負イオン源をこれらの装置に付けられるような工夫が必要であり、負イオン源の形やアルカリ金属の導入法などの検討を行う。従来から装置改造などを行って実験をしているので、容易ではないが装置の作成を実施することは可能である。初期の検討としては低分子化合物に関しての実験を行う。低分子の化学種でも、電子親和力の違いなどによりイオン化条件が異なる事が考えられるので、各化学種毎にアルカリ金属の種類、導入量、温度など様々な要素を変化させながら、負イオン生成の最適条件を確定する。その知見を活かして、高質量分子サンプルの負イオン化に挑戦する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度研究費補助金の直接経費は1,000,000円である。 物品費に70万円、旅費として、20万円、人件費として10万円使用予定である。 物品費としては、開発したイオン源を質量分析装置に取り付けるための金属加工費、アルカリ金属を導入でき負イオンを生成することが可能なイオン源の作成費、消耗品として不可欠な高純度のアルカリ金属やサンプルの購入に充てる。
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