研究課題/領域番号 |
24655067
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
早川 滋雄 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00156423)
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キーワード | 質量分析法 / 負イオン生成 / 表面電離 / アルカリ金属 |
研究概要 |
電荷逆転質量分析法を開発している途中で、イオン化エネルギーの低いアルカリ金属を用いると表面での電子移動が起こり、アルカリ金属は正イオンとなるが他の付着した物質が負イオンとして生成していると考えられる現象を見出している。アルカリ金属のイオン化エネルギーは、単体としてはCs: 3.89 eV, Rb: 4.56 eV, K: 4.14 eV, Na: 5.34 eVであり、これだけのイオン化エネルギーでの気相反応では、通常の分子が負イオン化するには大きな吸熱エネルギーとなり、熱力学的な説明ができない。しかし、アルカリ金属は当然金属種であるために、フェルミ面が生成するように表面上で金属としての性質を示す時に原子のイオン化エネルギーより非常に小さな値を示す可能性がある。現時点で化学的物理的に説明はできていないが、非常に興味ある現象でありイオン化法としての応用に関しての可能性も非常に大きいため、新規な非解離型高感度表面電離負イオン化法としての可能性の追求している。質量分析法のイオン源として実際に利用できることを実証することを目標とし、現在イオン源の開発に取り組んでいる。昨年度、高分解能でイオンの分析が可能な磁場電場磁場電場からなる日本電子製JMS-700T型のセクタータイプMS/MS質量分析装置を設置することができた。種々なイオン源の試作の結果、その高分解能の質量分析装置に実装可能な負イオン源を作成することができた。その開発したイオン源を質量分析装置に装着し、イオン化できる化学物質の種類、イオン化効率、化学物質導入の方法などを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、リユース品ではあるが負イオンの生成効率や生成種を高分解能で調べる事が可能な磁場電場磁場電場からなる日本電子製JMS-700T型のセクタータイプMS/MS質量分析装置を設置することができた。その質量分析装置に装着可能であると同時に、イオン源部の導入端子やイオン源の温度制御装置を利用することが可能なアルカリ金属の導入をできる新規負イオン源を設計し作成した。特に質量分析法のイオン源は通常数kVの高電圧に浮かす必要があり、一方でアルカリ金属は気化した後絶縁体に付着すると高電圧のリークが発生し装置故障の原因となる事が考えられる。そのため、初期設計を何度か修正することにより高電圧リークの問題点を解決し、実際に高電圧に浮いた表面での負イオン生成反応が可能なイオン源とする事ができた。現在、実際にイオン源を質量分析装置に取り付け負イオン生成の実験を行いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
質量分析装置に実装が可能なイオン源を作成できたので、このイオン化法がどのような化学種をイオン化できるかを検討する。初期の検討としては低分子化合物に関しての実験を行う。低分子の化学種でも、電子親和力の違いなどによりイオン化条件が異なる事が考えられるので、化学種毎にアルカリ金属の種類、導入量、温度など様々な要素を変化させながら、負イオン生成の最適条件を確定する。新規質量分析装置では、負イオンの加速と検出が可能であり、従来計画より詳細の検討ができるようになった。質量範囲も0~6000で使用できるため、生体分子などの高質量の分子のイオン化が可能かどうかも検討できるようになった。その知見を活かして、高質量分子サンプルの負イオン化に挑戦する。また、新規質量分析装置では衝突活性化解離が可能であり、その手法を用いることにより生成した負イオンの質量だけでなく構造情報などの詳細な検討も行う予定である。 表面でのイオン化法と明確に規定できるようにアルカリ金属を金属表面に真空中で薄く蒸着するための種々な試作と検討も行っている。アルカリ金属の表面状況とイオンの強度やイオン化が可能な化学種などを明確にする予定である。これらの実験結果とともに、その化学的基盤を明確にすることも視野に入れている。アルカリ金属が付着した表面で負イオンが非常に効率よく生成する機構を解明する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究に使用する新たな装置を設置することができ、そのために研究に中心を実験結果を出すことに集中させたため、旅費等のに関して残額が生じたため。」 研究の実施を中心とするも、結果の発表等も積極的に行う予定である。
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