研究課題/領域番号 |
24655072
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研究機関 | (財)神奈川科学技術アカデミー |
研究代表者 |
川野 竜司 (財)神奈川科学技術アカデミー, バイオマイクロシステムプロジェクト, 研究員 (90401702)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 脂質二分子膜 / 金属錯体 / 一分子計測 |
研究概要 |
本研究の目的は、人工脂質膜に再構成させた膜タンパク質のイオンチャンネルに金属錯体ナノ孔を導入し、ナノレベルで生体材料と人工材料とを複合化した高精度一分子認識システムの構築を目指すことにある。 今年度はかご状金属錯体を合成し、脂質膜との複合化に取り組んだ。中心金属としてRh、架橋配位子としてBDC(1,3-benzenedicarboxylate)を用いおよそ0.6 nmの細孔を有す金属錯体[Rh24(m-BDC)24] (RhMOP-OH)の合成に成功し、水溶液中で安定なナノ孔構造を保持できることを確認している。またこの錯体の配位子部分にアルキル鎖を修飾することにより、脂質溶液へ溶解可能になり、アルキルRhMOPを含有した脂質溶液で平面脂質二分子膜の作製を試みた。 従来の人工平面膜形成法では、作製した平面膜が不安定で再現性が低く、熟練した技術が必要であることからその利用は研究室レベルに限定されていた。このような膜を再現性良く形成する方法が望まれているが、再現性・安定性の向上を目指した工学的な研究は少ない。そこで本研究では「液滴接触法」による脂質二分子膜形成を行った。この方法では、まず有機溶媒中に脂質分子を溶かし、そこに水滴を導入する。脂質分子は親水基と疎水基からなるため、水と有機溶媒との界面には脂質の単分子膜が形成される。こうした液滴を2つ用意し、双方をマイクロ流体デバイス内で接触させることで、脂質二分子膜を簡便に再構成した。この方法での膜形成は再現性が約90%に向上させることができた。アルキルRhMOPを含有した脂質溶液で液滴接触法を行い、チャネル電流計測を行ったところ、MOPチャネル一分子に起因するイオン電流が観察された。引き続き本方法を用いて、MOPチャネルの物性評価を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在ターゲットとなるかご状金属錯体分子の合成、および脂質膜への埋め込みに成功している。現在このかご状分子の一分子のチャネルを流れるイオン電流の計測にも成功しつつあり、本研究は研究計画に沿って順調に進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
かご状金属錯体一分子を流れるイオン電流を観測することにより、その物理化学的な状態を明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品として試薬消耗品、および実態顕微鏡の購入を予定している。 旅費として、国際学会、国内学会発表の他、連携研究者との共同実験のために使用する予定である。 その他、論文英文校閲費用、論文投稿費用、謝金等使用する予定である。
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