研究課題/領域番号 |
24655073
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
網井 秀樹 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00284084)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 有機合成化学 / フッ素 / 不活性結合 / 結合活性化 / 不斉反応 |
研究概要 |
不斉炭素―フッ素結合活性化反応の開発に向けて、以下のアプローチで研究を実施した。 (1)プロキラルな基質(ジフルオロメチレン化合物)の合成:ヨウ化アリールとα-シリルジフルオロ酢酸エチルを、1当量のヨウ化銅、及びフッ化カリウム存在下で反応させることによりクロスカップリング反応が進行し、芳香族ジフルオロ酢酸エチルエステルが得られた。次に、クロスカップリング反応で導入したジフルオロ酢酸エステル部位の変換反応を検討した。具体的には、エチルエステル化合物を加水分解生成物である2-アリールジフルオロ酢酸をフッ化物塩存在下で加熱することにより、脱炭酸反応が進行し、芳香族ジフルオロメチル化合物へと変換することに成功した。興味深いことに、基質としてα-ヘテロアリールジフルオロ酢酸エステルを用いると、ワンポット操作で加水分解と脱炭酸が進行することを見い出した。 (2)有機アルミニウム反応剤による炭素-フッ素結合活性化:炭素-フッ素結合は非常に強固で安定な結合であるため、その結合を活性化することは一般的には困難である。近年、遷移金属錯体触媒、ルイス酸触媒を用いる炭素-フッ素結合の活性化が活発に研究されている。中でも、アルミニウム反応剤を用いて炭素-フッ素結合が活性化された例が報告されている。私たちは今回、有機アルミニウム反応剤を用いて含フッ素アルコールの反応挙動を調査したところ、炭素―フッ素結合が効率良く活性化されることを見出した。 1,2-ジクロロエタン溶媒中、基質の2-アリールジフルオロ酢酸エステルから1段階で得られるβ-フルオロアルコールに対し、2当量のトリメチルアルミニウムを作用させると、脱フッ素化が進行し、ケトン体が良好な収率で得られた。本反応において、β-フルオロアルコールのジフルオロメチレン部位がカルボニル基に、ヒドロキシル基がメチル基に効率良く変換された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しい炭素―フッ素結合活性化反応を見いだした。これまでにはない分子変換反応であり、学術的に興味深い結果を得た点においては、研究が進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ,本反応において,炭素―フッ素結合切断後、全てのフッ素原子が脱離している。ペルフルオロアルキル基を有する基質では、わずかではあるが、不斉点にフッ素を有する化合物が得られたが、その反応効率が悪いため、その収率向上を念頭において研究を継続する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度から25年度の繰越予定額は317,382円であるが、これは研究の効率的遂行の目的で繰越を行なった。すなわち、現時点では、選択的脱モノフルオロ化の可能性を見いだすことができたが、これを不斉触媒化するためには、1)生成物のさらなる収率の向上、2)キラル配位子を用いる反応系の徹底的検討が必要となる。 従って、約31万円の未使用額については、計画的に翌年度に持ち越し、主に消耗品、具体的には、原料フッ素化合物、金属反応剤、キラル配位子などを購入して、高効率的実験検討に用いる。
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