研究課題/領域番号 |
24655073
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
網井 秀樹 群馬大学, 理工学研究院, 教授 (00284084)
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キーワード | 有機合成化学 / フッ素 / 不活性結合 / 結合活性化 / 不斉反応 |
研究概要 |
不斉炭素―フッ素結合活性化反応の開発に向けて、以下のアプローチで研究を実施した。 (1)有機アルミニウム反応剤による炭素-フッ素結合活性化 平成25年度は24年度に引き続き、gem-ジフルオロメチレン化合物を基質として用いる選択的脱モノフルオロ化反応を検討した。β-フルオロアルコールに対し、2当量のトリメチルアルミニウムを作用させると、脱フッ素化が進行し、ケトン体が良好な収率で得られた。本反応において、β-フルオロアルコールのジフルオロメチレン部位がカルボニル基に、ヒドロキシル基がメチル基に効率良く変換された。本反応は新規の有機分子変換法であるが、基質のフッ素原子が全て失われる実験結果については、不斉触媒反応に展開できない状況である。そこで本年度より反応系の設計を再検討し、ジフルオロメチレン化合物のFriedel-Crafts反応に着手した。ルイス酸としてMe3Alを用いたところ、2つのフルオロ基が全てメチル基に置換された化合物が主生成物として得られた。触媒として、BF3-OEt2などのルイス酸を用いて反応を検討したが、複雑な混合物を与えるのみであった。現在、生成物の構造解析を行い、反応の詳細を調査している。 (2)ジフルオロメチレン化合物からの還元的炭素-フッ素結合活性化 2-アリールジフルオロ酢酸エステルに対し、マグネシウム/塩化トリメチルシリル還元系を作用させると、温和な反応条件で選択的な脱フッ素化が進行し、モノフルオロ化合物が良好な収率で得られた。この選択的炭素-フッ素結合活性化反応により誘導した2-アリールフルオロ酢酸エステルは、新しいモノフルオロ合成ブロックとして、今後、クロスカッルリング反応やアルドール反応などの不斉触媒反応に用いて研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新しい炭素―フッ素結合活性化反応を見いだした。これまでにはない分子変換反応であり、学術的に興味深い結果を得た点においては、研究が進んでいると判断できる。しかしながら、その選択性が乏しく、フッ素原子を1個残す技術の開発にはまだ至っていないので、今後は反応設計を精密化する。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ,本反応において,炭素―フッ素結合切断後、全てのフッ素原子が脱離している。ルイス酸触媒を用いるFriedel-Crafts反応の生成物の詳細分析、および、炭素―フッ素結合切断によって得られたモノフルオロ合成ブロックを用いて、不斉触媒化を継続する。
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次年度の研究費の使用計画 |
炭素-フッ素結合活性化反応の試作実験、生成物の分析を系統的に実施してきた。目的とする反応は、実際に実験を行うとフッ素原子が全て脱離してしまう結果になったが、この反応を利用して、別の新たな有用反応に展開できる可能性を見いだした。基質の分子設計を精密かつ慎重に行い、それに合わせて実験計画を変更したため、未使用額が生じた。 次年度に、さらなる基質の分子設計、生成物の解析を、実験結果とよく照らし合わせて計画を立て、引き続き炭素-フッ素結合活性化反応の開発を挑戦する。一定の成果を蓄積してから、次年度開催の学会での発表を行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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