研究課題/領域番号 |
24655077
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村上 正浩 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20174279)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 有機化学 / 合成化学 / 触媒 / 太陽光 |
研究概要 |
化石燃料の枯渇が危惧され、核廃絶への動きが急加速する現在、化石燃料や核に由来する大量のエネルギーを用いた熱反応に頼るのではなく、太陽光をエネルギー源として活用した反応・分子変換への転換が求められている。とりわけ、光合成に見られるように、太陽光をエネルギー源として利用し、豊富に存在する二酸化炭素を炭素源として有機化合物を合成することができれば、持続可能な科学技術の確立に向けて極めて魅力的である。本研究では太陽光を用いたアミノケトンへの二酸化炭素導入反応を開発した。また、この知見をもとに光学活性オキサゾリジノンの効率的な合成法を開発した。 N-トルエンスルホニルアミノケトンのDMF溶液をふくむパイレックス製のガラス容器に、太陽光を照射したところ、N-トルエンスルホニルアゼチジノールが生成した。さらに生成したアゼチジノールは、4等量の炭酸セシウムの存在下で、1気圧の二酸化炭素と反応して、アゼチジン環が開環した5員環カルボナートを与えた。この反応はまず、塩基によって脱プロトン化されたアルコキシドが二酸化炭素に求核的に付加してカルボキシラートアニオンとなり、これが歪みを有するアゼチジン環に付加して開環する。生じたスルホニルアミドアニオンがプロトン化されることで生成したものと想定される。この一連の反応はワンポットで行うことができ、アミノ基を有する様々な環状カルボナート誘導体を得ることができた。 また、光反応によって得られたN-トルエンスルホニルアゼチジノールに、N-へテロサイクリックカルベン触媒の存在下でイソシアナートを作用させたところ、オキサゾリジノンが生成することを見いだした。アミノ酸から調整した光学活性なアゼチジノールを用いることで、様々な光学活性オキサゾリジノンを合成することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初の計画のとおり、太陽光を用いたアミノケトンへの二酸化炭素導入反応を開発することができた。この成果はドイツ化学会誌Angewandte Chemieに掲載され、Hot Paperに選ばれるとともに、表紙として採用された。また、この成果で得られた知見をもとに、N-アレーンスルホニルアゼチジノールとイソシアナートの触媒的な付加環化反応を見いだし、これを用いた光学活性オキサゾリジノンの効率的な合成法を開発した。これらを踏まえて「②おおむね順調に進展している」とした。
|
今後の研究の推進方策 |
持続可能な科学技術の確立に向けて、環境に配慮した持続可能な合成手法の開発が求められている。今後もこれまでに得られた知見をさらに押し進めることで、太陽光を用いた新反応をデザインし、合成実験を実施する。さらには、開発した反応を活用した有用物質や新規物質の効率的な合成戦略を提案、実現していくことで、反応の有用性を示すとともに、持続可能な物質合成の新基盤を開拓していく計画である。また、以上のような合理的戦略に基づいて新技術を着実に開発する一方で、合成実験を実施するなかで、予想していた反応や既存の反応のみならず、まったく予想だにしなかった説明のできない結果が得られることもある。これらを見逃さず、その新規性、有用性について随時検証していくことで、研究の新展開の可能性を探る計画である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|