研究実績の概要 |
クロスピナコールカップリング反応は、非対称な1,2ジオールを直接的に合成するための有用な方法であるが、求電子種どうしのカップリング反応であるため、選択的なクロスカップリングが難しく、挑戦的な反応の一つとである。 本研究では、クロスピナコールカップリング反応の錯体触媒による制御を目指した。そのためには、配位子の空間的なデザインが重要である。そこで、異なる反応性および立体的環境を持つ2つの金属が結合形成に適切な距離で配置された錯体触媒をデザインした。具体的には、フラットで剛直性のあるヘキサアリールベンゼン骨格を土台分子とし、2つの異なるヘミサレン配位子がその面上に位置を固定されながらシスに導入された錯体触媒を設計した。昨年度、この錯体の合成とクロスピナコールカップリング反応への応用を報告した。 今年度も引き続き、ヘミサレン部位を2つ有する2核錯体触媒を用いたクロスピナコールカップリング反応の検討を行った。反応は、2核錯体触媒存在下、共還元剤である亜鉛とクロロトリメチルシランを用いる条件で行った。錯体触媒の置換基の効果を調べた。また、金属の組み合わせによる反応への影響を調べる目的で、対称および非対称なバナジウム(V)ヘミサレン2核錯体触媒を合成し、クロスピナコールカップリング反応を行った。その結果、それらのバナジウム(V)ヘミサレン2核錯体よりもバナジウム(V)とチタン(IV)異種2核ヘミサレン錯体を有する錯体触媒の方がクロスピナコールカップリング反応には有効であることが明らかになった。さらに、基質適応範囲を調査するとともに、触媒の有用性を示した。また、単核ヘミサレン錯体を用いたクロスピナコールカップリング反応も検討した。
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