研究概要 |
研究一年目において、窒素上に一つメチレンリンカーを挟んでポリフルオロアリール基を導入したイミダゾリウム塩をいくつか合成することに成功した。しかし、常温常圧下で全て塩は固体であり、期待していたイオン液体としての利用は困難であった。そこで研究二年目では、融点を低下させるためにイミダゾリウム塩を非対称化させ、さらに当初の目的に沿った、メチレンリンカーを挟まないポリフルオロアリール基の窒素上への直接的な導入を目指した。まず、市販のペンタフルオロアニリンに対し、グリオキサールを作用させ、次いで塩化アンモニウムとホルマリンを加え加熱還流した。最後にリン酸水溶液で処理することによりペンタフルオロフェニル基を窒素上に有するイミダゾールを合成した。これに対し、別途調製したペンタフルオロベンジルトリフラートをトルエン中で作用させる事で、窒素上にペンタフルオロフェニル基とペンタフルオロベンジル基を有する非対称型イミダゾリウムトリフラートを収率よく得ることができた。しかし、予想に反してこの有機塩は常温で固体であった。また一年目で合成していた対称型N,N-ビス(ペンタフルオロベンジル)イミダゾリウムトリフラートよりも融点が逆に10度程度上昇する結果となってしまった。そこで目線を変え、これら合成したイミダゾリウム塩を電子不足型NHC配位子前駆体と見なし、遷移金属触媒反応へと利用することを試みた。しかしながら残念なことに、現在までに有望な触媒活性を観測するには至っていない。一方で、上述の結果を受け、ポリフルオロアリール基ではなく、ポリフルオロアルキル基が窒素上に直接置換した新規イミダゾリウム塩の合成を目指した。この合成には、まず窒素上にポリフルオロアルキル基を導入する新反応を開発する必要があった。そこで検討を行ったところ、有効な銅触媒系を見出した。現在効率向上を目指し、検討を続けている。
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