研究課題/領域番号 |
24655082
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
南方 聖司 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90273599)
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研究分担者 |
武田 洋平 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60608785)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 二酸化炭素 / カルベン / 金属触媒 |
研究概要 |
目的とするカルベン様活性種の創製は、ケイ素-ケイ素結合切断に続く、二酸化炭素の挿入、転位を経て形成されるという反応設計に基づいて検討した。ケイ素-ケイ素結合の切断およびジシロキシカルベノイドの形成が可能な金属のスクリーニングを行った。その結果、予測したとおりに、Pd, Pt, Cuなどの金属がケイ素―ケイ素結合切断に適していることを見出した。これらの金属を中心に配位子も含めた検討を行ったところ、配位子としては、ケイ素の転位段階の生起のし易さとカルベン錯体が適しており、少量ではあるが二酸化炭素を補足した化合物を得ることができた。ジシランはできるだけ汎用性の高いものとして鎖状を使用したいが、ケイ素―ケイ素結合切断を司る金属種によって使い分けが必要となる。Pdを適用する場合は環状の歪んだジシラン、Ptの場合は鎖状ジシランが適していることが判明した。いずれにしてもカルベン錯体の金属の違いによる反応性に帰結されるので、それぞれフィードバックしながら基質と金属の選定を今後検討する必要がある。 カルベノイド錯体の単離に挑戦したが、かなり活性な錯体であり、その単離および結晶化には現在のところ至っていない。今後グローブボックス等を駆使して、単結晶を作成し、X線結晶構造解析を検討する。 二酸化炭素の状態について最適条件を調べた。常圧で目的の反応が進行することが分かったが、非常に効率がよくないので、今後圧力の効果を検討する。錯体の反応挙動について調べた。アルケン、ケトン、アルデヒドあるいはイミン等との反応を検討し、小員環合成を試みたが、未だ目的物質は得られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
二酸化炭素を固定化してカルベンの発生の証拠をつかんではいないが、カルベン様に作用した反応生成物を少量ではあるが、得ることに成功している。この基礎的な知見は、今後の研究に大いに役立つ。触媒のスクリーニング法や配位子の選択法の迅速化を図り、研究を進展させる。以上の成果は、本研究の糸口をつかんだにすぎないが、かなりチャレンジングな研究課題であることから、自己的には満足している結果である。
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今後の研究の推進方策 |
目的のカルベン様活性種の創製は、金属によるケイ素-ケイ素結合切断に続く、二酸化炭素の挿入、転位を経て形成されるという反応設計に基づいている。金属錯体の設計として、中心金属(Pd, Pt, Cuなど)とNHC配位子をさらに精査し、カルベノイド発生に必要なジシランの骨格との相関を明らかにする。カルベノイド生成を確認後、アルケン、ケトン、イミンあるいはヘテロ原子のα位やベンジル位との反応を検討し、付加価値の高い小員環化合物やCH活性化による炭素―炭素結合形成反応に展開する。最終的には反応の触媒化を目指し、金属触媒の配位子を光学活なものを使用することによって、不斉合成をめざす。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度の遅れを取り戻すべく、迅速な最適条件の探索を行い、効率的なカルベンの発生法を検討する。 前年度で得た知見を基盤とし、本系を触媒反応へと展開する。本反応は基本的に触媒化が可能である。そこで効率的な触媒反応サイクルの構築を行うとともに、様々な基質(アルケン、カルボニル化合物、イミンなどの不飽和化合物)へと応用し本反応の一般性を図る。 また、前年度に得た最適配位子(P系、N系あるいはそれらの混合系)のキラル修飾を行い、本系を不斉合成へと展開する。例えば、反応基質としてカルボニル化合物を用いることにより不斉エポキシ化を、イミンを選択することにより、光学活性なアジリジンを合成する。さらに、このようにして得られたアジリジンに対してフッ化物イオンを作用せせることにより、光学活性名なアミノ酸へと誘導する。
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