研究課題/領域番号 |
24655084
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高木 謙 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80116615)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | NHC触媒 / 小分子活性化 |
研究概要 |
フェニルビニルケトンを代表基質に選び、NHC触媒によるホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒド)のダブルステッター反応の検討を行った。NHC触媒の種類に関しては、イミダゾール、トリアゾールNHCは全く活性がなく、チアゾールNHC触媒でのみ反応が進行した。その中でも1-ベンジル-4-(2-ヒドロキシエチル)-5-メチルチアゾリウムが最も活性であった。さらに、反応条件を検討したところ、DFMF溶媒、DIPEA塩基、120°C、1h、エノン/HCHO=3が最も最適であることがわかった。 この反応はほぼ定量的に進行するが、目的物である1,8-ジフェニル-1,4,7-トリケトンの生成以外に副反応として、一回目のステッター反応に続いてメチロール化反応が起こり5-フェニル-2.5-ジケトンも副生する。その生成比は電子吸引基、供与基を有するフェニルビニルケトンではおよそ85/15程度であった。しかし1-ナフチル、2-フリル、2-チオフェニルービニルケトンでは95/5以上となり、選択性が向上する。 反応経路と選択性を決定する要因を解明するために、予想される素反応プロセスの検討を行った。その結果、ホルムアルデヒドとNHCの付加体(Breslow Intermediate)とホルムアルデヒドの2量体であるグリコアルデヒドのBreslow Intermediateそれぞれがフェニルビニルケトンと反応する速度比が目的物と副生成物の生成比を決定していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ホルムアルデヒドを形式的に2つのアルデヒド基を持つ化合物として利用できれば、一酸化炭素の等価体として、新しい有用な工業原料となり得る。その手段としてNHC触媒での活性化を行い、これを実現できる新反応を開発することが本研究の目的である。 研究を開始して、狙いを実現できる見通しはついたが、真に実用化できるレベルにはまだまだ解決すべき諸問題が残っている。その大きな阻害要因はホルムアルデヒドは重合体であるパラホルムアルデヒドになっているので、モノマーの発生に高温反応が必要である。しかし高温ではNHC触媒や活性中間体の分解による収率低下や選択性の低下を招いている。室温付近で反応を進行させる触媒設計や条件の改良がさらに求められている。またホルムアルデヒドそのものではなく、そのアセタール体やHSO3Na付加体を使用する等の工夫も必要となっている。
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今後の研究の推進方策 |
前項で述べた問題点の解決を図りつつ、ホルムアルデヒドをアシルジアニオンと利用する反応開発を行う。つまり、breslow中間体とさまざまな炭素ーハロゲン化物との2回の反応でケトンを合成する新反応を検討する。この反応は高価なジチアンのダブルアルキル化と等価な反応であるが、ホルムアルデヒドを使用できれば工業的価値が高い。同様にニトロソ化合物やジスルフィドとの反応では尿素やジチオカーボネートの生成が期待でき、これはホルムアルデヒドが猛毒のホスゲンの等価体として利用できることを意味する。 ここまでに述べたホルムアルデヒドのbreslow中間体は求核剤として働く活性種である。新たな試みとして、この中間体をMnO2やキノンで酸化すれば、ホルミルカチオン-NHCが発生すると予想され、この活性種は逆に求電子剤として使えるものと期待できる。このコンセプトに基づいて電子豊富なオレフィンのホルミル化反応等を検討する。 このように、単純で安価なホルムアルデヒドをNHC触媒で多様に活性化して、非常に有用で役に立つ工業プロセスの開発を図っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1) 消耗品費: 反応溶媒、反応試薬、不活性気体など 計1,247,177円 (2) 国内旅費: 情報収集、学会発表(大阪、東京)など 計230,000円 (3) 人件費・謝金: データ入力など 計20,000円
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