研究課題/領域番号 |
24655084
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高木 謙 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80116615)
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キーワード | NHC触媒 / 1,2-ジケトン / α,β-不飽和ケトン / ステッター反応 / ダブルアシル化反応 |
研究概要 |
本研究はN-ヘテロサイクリックカルベン(NHC)触媒によるステッター反応を用いて、ホルムアルデヒドを一酸化炭素等価体として利用する方法を開発する目的で開始した。この目的の一部は昨年度ある程度達成できたが、さらに研究を進める課程において、偶然にもベンジル等の1、2-ジケトンがNHCによって活性化されα、βー不飽和ケトンをダブルアシル化できることを発見した。従来のステッター反応はアルデヒドRCO-HのアシルーHを切断して共役カルボニル化合物のヒドロアシル化を行うことに対して、この反応はRCO-R'COのアシルーアシル結合を切断して2つのアシル基を付加できる全く新規なものである。この有用な知見を発展させるために、最適反応条件、基質適応性、反応機構等についての検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホルムアルデヒドはその構造よりステッター反応を2回繰り返せる基質であり、2分子のエノンを両サイドに付加することで、形式的には一酸化炭素等価体として利用できると考え研究を開始した、1段階目はうまくいくが、2段階目のエノンの付加反応が、他分子ホルムアルデヒドの反応と競争して、メチロール化合物が副生し、目的物/副生成物の比が85/15程度に留まることがわかった。まずまずの結果ではあるが、最高ではない。この制限を打破する様々な試みを実行する過程で、上述のように、1,2-ジケトンのダブルアシル化反応を発見した。この知見は非常に有用で価値が高い。そこで活性化する炭素小分子として1,2-ジケトンを対象に取り上げて、新たな展開をおこなっている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、NHC触媒/1,2-ジケトン系によるダブルアシル化反応のトラップ剤(反応基質)はエノンとイノンに限定されており、それ以外の電子不足な炭素ー炭素多重結合では非常に低収率となっている。従来のステッター反応ではBreslow中間体がトラップ剤に付加して反応が進行するが、この新反応ではアシル化されたBreslow中間体が生成しており、この求核性の乏しさが低収率の原因と思われる。そこで性質の異なる2種類のNHCを触媒として使用し、求核性の高いNHCはRCO-RCOを切断してアニオニックBreslow中間体を発生させ、立体障害の小さいNHCは外れたアシル基を補足してアシルーNHCカチオンを発生させる。このコンセプトが成功すれば、求核的アシルと新電子的アシルの同時発生が可能となり適用範囲の拡大が期待できる。2種類のNHCの同時使用は全く知られておらず、有機触媒の発展に大きく貢献できると期待している。 また1,2-ジケトン以外でもアシルシランやアシルホスホナート/NHC触媒による炭素ー炭素多重結合のアシルーシリル化、ホスホナート化反応の可能性について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H26年度前半に研究棟のリニューアルが実施されるので、別の建物に研究室物品をすべて移転し、年度後半には戻ることが決定されている。この事態にあたって、移転の効率化と安全性を考慮して薬品類購入は最小限に抑え、またガラス器具や測定装置の更新を控えていたので、B-Aがかなり大きくなった。 新しい研究室にもどる直前に、最低の必要経費 [旅費(150千円)、謝金(50千円)、その他(50千円)]を除いたすべての金額を、精密天秤、真空ポンプ、不安定な特殊薬品などの物品購入に充てて、研究を遂行する予定である。
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