研究概要 |
これまで様々な不斉反応が開発されており,その触媒は点不斉や軸不斉などを有する化合物がもっぱら用いられている。らせん不斉触媒を用いた不斉反応の例はほとんど無いが,ヘリセンのらせん内部に配位部位を持つアザヘリセンを合成できれば新しい不斉触媒になると期待される。らせん不斉触媒を合成するには,歪んだ構造をいかに構築するか,また,いかに光学活性体を得るかが鍵である。これまで,不斉反応に利用されたヘリセン型らせん不斉化合物として, [5]アザヘリセンN-オキシドおよびその[6]ヘリセン誘導体のみが知られており,らせん不斉を有する不斉触媒の開発は,未開拓の領域である。一般にヘリセンのらせん異性は[6]ヘリセンでは保たれるが,[5]ヘリセンでは容易に失われる。特にペリ位が炭素から窒素に置き換わったアザヘリセンはペリ位の立体障害が減少し,異性化しやすいことが知られており,先述の[5]アザヘリセンN-オキシドの還元体であるアザヘリセンはらせん不斉を維持できない。 先に我々は分子内ピナコールカップリングにより,不斉転写を利用した光学活性なジヒドロ[5]ヘリセンの合成法を開発している。本研究では含窒素ビアリールジカルボニル化合物から不斉転写ピナコールカップリングを用いて,光学活性な擬[5]アザヘリセン類を合成し,そのらせん不斉を活用した不斉反応を開発することを目指し検討している。 当該年度は,不斉転写を伴う,分子内ピナコールカップリングにより,光学活性擬[5]ジアザヘリセンを合成するためのピナコールカップリング前駆体,7,7’-ジカルボニル-8,8’-ビキノリンの合成について検討し,7,7’-ジカルボニル-8,8’-ビキノリンのアセタールを合成することに成功した。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の配分額の10%以下に相当する108,645円を次年度に繰り越した。これは,当初予定した,試薬類等の購入を次年度に行うことにしたためである。 次年度予算は当初配分予定額(1,600,000円)と併せて,1,708,645円となる。次年度は当初申請品目と変更なく,消耗品(1,600千円,ガラス器具,試薬,溶媒,クロマト用シリカゲル)および旅費(108,645円)に補助金を使用する予定である。
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