研究課題/領域番号 |
24655088
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
河内 卓彌 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (70396779)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 合成化学 / 触媒・化学プロセス / 有機化学 |
研究概要 |
まず基質として、末端オレフィン、シクロヘキセン環の二ヶ所のオレフィン部位を有する1,8-ジエンであるマロン酸ジメチル誘導体を用いて、フェナントロリンパラジウム錯体を用いて反応を検討したところ、チェーンウォーキングを経る環化異性化反応が進行し、最高収率84%で目的物が得られた。また、本反応では環化異性化の初期生成物が反応後期ではより安定な四置換オレフィン部位をもつ生成物へと異性化していることがわかった。この生成物の異性化反応は、シクロヘキセンを添加物として用いることで、抑制可能であることも明らかと成った。 環化異性化後は多くの異性体が生成するため、単離を容易にするために酸化白金を用いた水素添加反応を行った。その結果、二種類のジアステレオマーに加えて、四置換オレフィン部位をもつ生成物の異性化物、環化していないオレフィン異性化物の水素化体の四種類の生成物に収束した。また、この混合物に対してGPCを用いて生成操作を行うことで、二種類のジアステレオマー混合物を高ジアステレオ選択的に得ることができた。 続いて、1,8-ジエン以外の基質についても、環化異性化反応・水素化反応を検討した。まず、チェーンウォーキングの距離について検討するため、末端オレフィン部位を環化部位との間のメチレン鎖の長さを0から7まで変化させたところ、いずれの場合にもGC収率75%以上で目的のビシクロノナン誘導体が得られた。 さらに、以上の検討ではマロン酸ジメチルを用いていた、二つのオレフィンの連結部位について検討した。その結果、マロン酸ジエチルやマロン酸ジt-ブチル誘導体を用いた場合にも、同様にチェーンウォーキングを経る環化異性化が進行し、対応するビシクロノナン誘導体が高収率で得られた。また、メルドラム酸誘導体やトシルアミド誘導体を用いた場合にも、同様の環化異性化に成功し、五員環生成物を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度の研究実施計画に関しては、半分程度までは検討を行っている。非環状オレフィン部位を2つもつ基質の検討や、環化異性化後のオレフィン部位の収束を狙った検討はまだ不十分な状態である。当初より用いていた基質による反応条件の最適化、特に生成物選択性を向上させる取り組みに時間を要していたため、多くの基質を合成して触媒反応を検討するのに十分な時間がまだ割けていない。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、①非環状オレフィン部位を2つもつ基質の検討と、②環化異性化後のオレフィン部位の収束を狙った検討を行う。このため、末端オレフィン部位と非環状内部オレフィン部位を併せ持つ基質を多く合成し、同様の環化異性化反応、および続く水素化反応を検討していく。また、生成物のオレフィンの位置を収束させるため、オレフィン部位を三置換以上にできる基質や、アシル基、ホルミル基、エステル基、アリール基などといったオレフィンの安定化に寄与できる官能基にオレフィンを収束させられる可能性のある各種基質を合成し、検討を行っていく。 さらに末端オレフィンと環状オレフィンの連結部位の検討を行う。例えば、β-ジケトン、環状エーテル、フルオレンなどを用いる。また、窒素や酸素を連結部位に用いた場合についてもさらなる検討を行う。また、これらについては、非環状オレフィンが適用可能かどうかも併せて調べていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
基質の合成、反応の検討などのため多くの必要な試薬、器具、実験装置を購入していく。特に前年度より遅れている基質の検討を十分に進めるために、その合成のための試薬等の購入を進める。また、研究の進展具合を考慮しながら、研究発表も行っていく。
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