研究概要 |
本研究において今年度はまず1,n-ジエン類の環化異性化反応の基質適応範囲の拡大を目指し、シクロヘキセン以外の内部オレフィン部位をもつ1,n-ジエンに関して検討を行った。鎖状内部オレフィン部位をもつ1,8-ジエンを用いてフェナントロリンパラジウム錯体による環化異性化および酸化白金による水素添加反応を行ったところ、シクロヘキセン部位をもつジエンと同様に五員環骨格が形成し、C2対称であるシクロペンタン誘導体がGC収率91%、ジアステレオマー比>98:2で得られた。続いて、オレフィン間の距離の異なる鎖状ジエンを用いて検討を行ったところ、1,7-ジエン、1,9-ジエン、1,10-ジエンおよび1,14-ジエンより五員環化合物がGC収率77-91%で得られた。 一方、これまで本反応の利用法は、環化異性化後に得られた異性体混合物に対して酸化白金を用いた水素添加反応を行うことにより、水素化体として化合物を得る手法に限られていた。そこで、本反応において主生成物として得られる環化体の精製法の検討を行った結果、オレフィンと銀との相互作用によりオレフィン異性体の分離が報告されている硝酸銀シリカゲルカラムクロマトグラフィーが、本反応において生成する異性体混合物に対しても効果的であることがわかった。シクロヘキセン部位をもつ様々な1,n-ジエン(n = 7-14)の環化異性化後、この手法を用いて精製を行ったところ、主生成物である二置換オレフィンを単離収率50-75%で得ることができた。
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