研究概要 |
【1.アザスピロ骨格天然物モデルを用いた異性化晶出・吸着による中心不斉分子変換】 本年度も引き続き,アザスピレン骨格天然物モデル化合物の光学分割と効率的な骨格異性化反応について検討を行った.種々の光学分割剤を9位のヒドロキシ基に導入し,アザスピレンモデル骨格のジアステレオ分割を検討した結果,N-Boc-O-benzyl-L-serineがジアステレオ分割に最適であることを見いだした.これらを分割後,それぞれの異性体を酸性条件にて加水分解を行うと,光学純度を完全に保持したモデル分子への変換が可能であることがわかった.この分割法で得られた光学活性アザスピレンモデル分子を水と混合し,加熱したところ,三連続不斉中心の立体反転を伴うラセミ化が進行することを見いだした.従来アザスピレン骨格は分子内水素結合によりラセミ化が起こらないとされていたが,水中では分子内水素結合の開裂が起き,骨格自体がラセミ化することを初めて明らかとした. 【2.ピリジノファン・シクロファン分子の異性化晶出・吸着による面不斉分子変換】 ピリジン環のC-6位にブロモ基を導入した[14](2,5)ピリジノファン誘導体を合成し,側鎖にS体アミノアルコール由来のキラル補助基を導入した化合物の異性化吸着について検討した.ブロモピリジノファン誘導体の1:1ジアステレマー混合物を参照触媒アルミナJRC-ALO-1Aに吸着させた後,加熱による面不斉の異性化を行ったところ,いずれのアミド体においてもR体の面不斉を有するジアステレオマーが優先的に生成することが明らかとなった.これは,従来我々が報告している[10](2,5)ピリジノファンに続き,長い架橋鎖を持つピリジノファン分子においても異性化吸着が進行することを確認した成果で有り,異性化吸着による面不斉キラリティー転換に一般性が認められることを明らかにした.
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