研究課題/領域番号 |
24655092
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
佐野 正人 山形大学, 理工学研究科, 教授 (40344816)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 濡れ / ゲル化 / 吸着 / 共焦点レーザーラマン顕微鏡 |
研究概要 |
固体基板にテフロン、および、マイカ、溶媒にトルエン、および、パラキシレンを用い、12-ヒドロキシステアリン酸をゲル化剤として用いた。ゲル化剤をそれぞれの溶媒に溶かした熱い溶液(およそ70℃)をそれぞれの固体表面上で冷却し、およそ60℃でゲル化させた。固体表面からゲル内部方向に向かう断面のゲル化剤、および、溶媒の密度分布を共焦点レーザーラマン顕微鏡で観察した。その結果、(1)テフロン上のトルエンゲルでは、ゲル化剤は正の吸着を示した。特に、表面密度はバルク密度に指数関数的に減衰したが、その減衰距離は168μmと非常に長い値となった。(2)テフロン上のキシレンゲル、および、マイカ上のトルエンゲルは弱い正の吸着もしくは、ほとんど吸着されていなかった。(3)マイカ上のキシレンゲルでは、表面から60μm離れた距離で極大を持つゲル化剤密度分布が得られた。(1)および(2)の結果は通常の固体表面における物質の吸着状態を表わしているが、(3)のケースはこれまでに報告例の無い特異的な状態である。 そこで、それぞれのケースで液滴のつくる接触角を測定したところ、(1)と(2)の場合、接触角は溶媒の蒸発に起因して単調減少しただけであった。ところが、(3)の場合は、ゲル化前の溶液状態では濡れが良くなるように接触角が急激に減少し、ゲル化すると接触角が急に増加するという反転現象を観察した。このような、ゲル化に伴う濡れの反転はこれまでに報告例が無い。 以上の実験から、表面から離れた極大を持つ吸着構造と濡れの反転に強い相関が予測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
非常にわかりやすく、測定が簡単な接触角が、特異的な吸着構造に対応することがわかった。吸着構造を評価する実験は長い時間を要するのであるが、それが短時間で測定できる接触角により、ある程度評価できる。多種多様な固体素材や溶媒を、接触角測定から迅速にスリーニングでき、今後の実験が加速できる。
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今後の研究の推進方策 |
濡れの反転現象、および、極大密度分布の要因を探る。 (1)マイカ上のキシレンゲルについて、ゲル化速度を変えたときの吸着構造を観察し、濡れの反転前と後の状態を推測する。 (2)多種の固体表面と溶媒の組み合わせで接触角を測定し、濡れの反転の有無を調べる。固体素材と溶媒の物性値から、反転を起こす条件を絞り込み、そのメカニズムを推定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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