研究概要 |
本研究では,配位重合の概念を芳香族高分子の合成にまで拡張し,既存の方法では得られない新規高分子材料の創製を行うことを目的とする.アラインの合成等価体である「芳香族モノマー」を配位(共)重合させることにより様々な芳香族高分子の合成を行う.計2年間の研究期間を通して,研究計画書で提案した3つの高分子,すなわち,ポリ(オルト-アリーレン),芳香族ポリケトン,グラフェンナノリボンの全てを合成することができた.以下,各ポリマーについて詳細を述べる. (1) 芳香族モノマーの単独重合によるポリアリーレンの合成:平成24年度には,2,3-ジデヒドロナフタレン等価体の配位重合によりポリ(ナフタレン-2,3-ジイル)を合成した.平成25年度は,本重合手法を2,3-ジデヒドロアントラセン等価体および2,3-ジデヒドロトリフェニレン等価体へと展開した.配位子や反応温度を検討することで高い収率で目的のポリ(オルト-アリーレン)を得た.いずれも現在知られている中で最長のポリ(オルト-アリーレン)の合成例である. (2) ポリ(オルト-アリーレン)の脱水素酸化によるグラフェンナノリボン合成:(1)に引き続いてポリ(ナフタレン-2,3-ジイル)誘導体に塩化鉄を作用させて脱水素酸化することで,黒色の生成物を得た.難溶であるため完全には同定できていないが,電子顕微鏡(SEM)観測およびラマン分光によりグラフェンナノリボンの生成が強く示唆された. (3) 芳香族モノマーと一酸化炭素との共重合による芳香族ポリケトンの合成:2,3-ジデヒドロナフタレン等価体と一酸化炭素を,遷移金属触媒を用いて共重合させることにより芳香族ポリケトンの合成を行った.本共重合体はオルト-アリーレン基とカルボニル基が完全交互に配列した前例のないポリマーである.
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