研究概要 |
有機エレクトロニクス分野において代表的骨格を有するポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)は高い結晶性、ホール移動度、および溶解性のバランスに優れ、注目を集めている材料の一つである。有機薄膜太陽電池への応用を指向した材料設計において、P3HTの吸収波長領域よりも長波長光を吸収する材料の開発は必須であるにも関わらず、多くの分子団が重合に使用する活性試薬との非共存性により制限を受け、本分野の進展の妨げとなっている。 本研究の目的は、これまでGrignard試薬を用いたチオフェン系モノマーの精密重縮合法に着目し、その高すぎる反応性によりこれまで検討されなかった含官能基チオフェン系モノマーの重合検討を行なうことである。Grignard試薬の代わりにかさ高く塩基性の低い亜鉛アート錯体を使用することで、これまで重合制御の難しかった長波長吸収・電子欠損ポリマーの合成を検討した。 H25年度には、イミド基を2個有するナフタレンジイミド骨格を持ったチオフェン系ジハロモノマーを設計・合成し、亜鉛アート錯体のtBu4ZnLi2およびPd触媒を用いた根岸カップリング重合により電子欠損ポリマーを得ることにはじめて成功した。 研究期間全体を通じては、亜鉛アート錯体を使用したP3HTの精密合成により、分子量の制御(Mn = 1,650-32,800)、小さい分子量分布値(Ð<1.03-1.17)、高い立体規則性(rr>92-99%)を達成した。さらに亜鉛アート錯体を利用することで、官能基としてイミド基を有するモノマーの重合に成功し、電子欠損ポリマーの新規合成法としての確立を行なった。 今後は、さらに対象モノマーを広げ、有機薄膜太陽電池材料としての性質向上に資するポリマー材料の探索を続ける。
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