グライコミクス研究として糖鎖チップの調製法としてナノスケールで自在に複合糖鎖を導入する手法を酵素反応の1分子力学計測モニタリングにより達成することを目標として研究を推進した。具体的には酵素修飾カンチレバーを糖鎖固定化基板にゆっくりと接触させてその時点で反応基質を添加することにより反応を完結させて、数名取る先の地点に移動して同様の反応をくりかえして、一面を所定の糖鎖で覆うことを目的としている。実際には反応させた後に糖鎖結合タンパク質を固定化したチップを用いて、固定化分布状態を確認することまで行った。 24年度までにコンドロイチン合成酵素を用いて基板表面をGalNAcという糖鎖とGlcAという糖鎖を糖転移反応できることを明らかにした。すなわちカンチレバーに当該酵素を修飾し、基板上に固定してあるコンドロイチンオリゴマーに接触させ、チップをそのままにしている状態で反応基質であるUDP-GlcNAcまたはUDP-GlcAをそれぞれくわえ、所定時間置いた後に酵素修飾チップを引き上げ、その後、酵素を近づけて話すことで相互作用解析することにより反応完結が特定の条件の時のみ起こることを明らかにした。よって、その二種類の糖鎖によって表面を覆い分けることができる可能性を示した。 25年度には、上記の反応を各地点で選択して行うことにより、分布状態を作り分けることができることを確立した。すなわち、表面の末端糖がGlcNAcの時にはGlcA単糖のみが転移して末端がGlcAになり、一方、表面の末端糖がGlcAの時にはGlcNAc単糖のみが転移して末端がGlcAになることを利用して、ある特定の数10ナノメートル四方の領域毎に両者の糖でそれぞれ別々に覆うことができることを明らかにした。
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