研究課題/領域番号 |
24655100
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
瀬 和則 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00154633)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | オール・オア・ナッシング型分解反応 / 選択分解反応 / 高分子材料 / ポリ(n-ヘキシルイソシアナート) / マクロモノマー / グラフト共重合体 / 櫛型高分子 / 新規な分子設計法 |
研究概要 |
ポリ(n-ヘキシルイソシアナート)(PHICと略す)を用いて,「オール・オア・ナッシング型の高分子選択分解反応を用いた全く新規な高分子材料の創製」の研究を遂行するのが全体構想である。3年計画の中で,初年度の平成24年度では,「PHIC鎖から成る新規な分岐高分子の創製」を目的に研究を推進した。 一つ目の具体的成果として,「PHICの櫛鎖数が異なる一連の櫛型高分子を合成する」ことに成功した。まず,片末端にスチリル基を有するPHICマクロモノマーを合成して,それをラジカル重合させて,櫛鎖数が8本程度の櫛型高分子を合成した。そのPHIC櫛鎖をナトリウム・アルコキシドにより順次分解させて,櫛鎖数が8本から0本まで減少した一連の櫛型高分子を合成した。得られた一連の試料の絶対分子量を測定してそれらの特異構造を解明し,更に櫛鎖数分布を決定した。 二つ目の具体的成果として,「PHICのグラフト鎖数が異なる一連のグラフト共重合体を合成する」ことに成功した。まず,PHICマクロモノマーとスチレン(St)モノマーとをラジカル共重合させて,グラフト鎖数が12本のPSt-graft-(PHIC)nグラフト共重合体を合成した。そのPHICグラフト鎖を順次分解させて,主鎖PStの分子量が同じでPHICグラフト鎖数が12本から0本まで減少した一連のグラフト共重合体を合成した。得られた試料の分子量と組成分布を決定し,それらの特異構造を解明し,更にグラフト鎖数分布も決定した。 この様に,今までの研究手法では合成できなかった2例の「PHIC鎖から成る新規な分岐高分子の創製」を世界で初めて行った。更に「選択分解反応を組み込んだ新たな分子設計法」の実在とその有用性を世界で初めて実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポリ(n-ヘキシルイソシアナート)の選択・完全分解性を応用して,従来の合成法では合成できなかった新規な高分子材料を創製するのが研究の全体構想である。その中で,初年度の平成24年度では,(1)PHICの櫛鎖数が異なる一連の櫛型高分子を合成することに成功し,(2)PHICのグラフト鎖数が異なる一連のグラフト共重合体を合成することにも成功した。 この様に,初年度の平成24年度に当初設定した「研究の目的」の約80%を達成することに成功した。しかし,上で述べた(1)の成果と(2)の成果とを組み合わせて,より応用的な課題である(3)「シシカバブ構造体」を,時間的制約のため,合成できなかったので,20%の未達成度が生じた。その代わり,(4)櫛鎖数分布やグラフト鎖数分布の決定という,当初の研究課題に入っていなかった課題まで研究を進展できた。この進展分を10%のプラス達成度に含めると,初年度の平成24年度における「研究目的」の達成度は 100% - 20% + 10% = 90%程度であり,おおむね順調に研究は進展したと思う。
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今後の研究の推進方策 |
「オール・オア・ナッシング型の高分子選択分解反応を用いた全く新規な高分子材料の創製」を実行するのが研究の全体構想であった。3年計画の中で,初年度の平成24年度では,「PHIC鎖から成る新規な分岐高分子の創製」を目的に研究を推進し,「研究目的」の達成度は90%程度であり,おおむね順調に研究を進展できたと思う。 そこで,初年度で得られた研究成果を用いて,3年計画の中の2年目である平成25年度では,当初の研究計画通り「PHICの分解による新規なナノ材料の創製」に関する研究を行う予定である。具体的課題として,(1)初年度で合成したPHICのグラフト鎖数が異なる一連のグラフト共重合体を用いて「PHICを鋳型とするナノ材料の作製」を行い,(2)これら試料の高次構造を制御して「規則的な空隙構造を有するミクロ相分離構造の創製」研究を推進し,(3)これら2つの研究成果を組み合わせて,より応用的な課題である「ナノチューブやその空孔体の作製」へ研究を発展させる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
「該当なし」
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