正二十面体ホウ素クラスター「カルボラン:C2B10H12」は、耐熱性高分子など材料化学の分野から、ホウ素中性子捕捉療法など医療分野まで幅広く実用化されているが、有機エレクトロニクス材料としての応用を指向した研究例は皆無に等しい。そこで本研究では、カルボラン類の強い電子求引性、およびビアリール類を平面に固定化できることに着目し、ビフェニルやターフェニルを縮環させた新規電子求引性共役系分子を合成するとともに、それらの諸物性を明らかにした。 また本研究では、カルボランの9位と12位に位置するホウ素原子にπ共役系骨格を置換した全く新しいタイプの共役系分子の合成にも成功した。その結果、1位と2位の炭素に置換したπ共役系がカルボランによって電子不足となるのに対し、9位と12位のホウ素に置換したπ共役系は緩やかに電子が供給され、結果として電子が比較的豊富な共役系となることが分かった。 発光特性も1位2位置換化合物と異なり、9位12位置換化合物は溶液中において強く発光することが分かった。これを利用して、25年度はさらに1位・9位・12位の三カ所にπ共役系を置換した三官能性カルボラン化合物の合成にも成功した。溶液と固体状態においてその発光色をコントロールできることを明らかにし、凝集状態を変えることで発光色を青色からオレンジ色へと制御できることを見出した。その途中において、高輝度白色発光を発現することにも成功した。
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