高分子薄膜の周囲を気体の漏れがないように固定し、一方向から圧力を加えると膜の張りだし変形が起こる。この変形は透過膜、燃料電池用電解質膜等で観測される。このような高分子薄膜の力学的強度は材料の信頼性とも関連して極めて重要である。しかしながらこのような圧力を加えた状態での膜の変形、特にクリープ挙動とクリープ寿命に関しては高分子力学物性の基礎として重要であるにも関わらず、殆ど研究が行われていない。 平成24年度は、円形スリットを用いた圧力印加時の高分子薄膜の変形を直接測定するバルジ型の高分子薄膜力学物性試験機を試作し、いくつかの高分子材料で予備測定を行い、圧力を加えたときの膜の膨らみ状態から膜の力学物性を評価できることを確認した。平成25年度はこの装置を用いて固体膜の力学物性が既知の柔らかいゴム系材料のポリウレタンあるいは硬い樹脂であるエポキシ薄膜のバルジ試験を行い、室温において二軸伸長に相当する応力ー歪み曲線を測定した。ポリウレタンあるいはエポキシ薄膜において弾性率の違い、破裂時の破壊応力の違い、変形挙動の違いを観測した。クリープ挙動、クリープ寿命に関しては圧力制御システム、また変形測定装置の安定性と精度が問題となっており測定には至っていない。また短冊状のスリットを用いたバルジ試験についても検討に着手したが、変形量の測定手法を確立する必要があり、実際の薄膜の測定は今後の検討課題となっている。
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