研究課題/領域番号 |
24655105
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
大崎 茂芳 奈良県立医科大学, 医学部, その他 (90273911)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 糸 / クモ / 集合体 / 隙間 / ねじり / 塑性変形 / 多角形化 / 軽減 |
研究概要 |
クモの細い糸は弾性的で、高弾性率で、力学的に強いという特徴があることから、夢の繊維として注目されている。将来的に実用化されるとしたら、繊維集合体として利用される。ところが、クモの糸の集合体では繊維間に隙間が多く、バルク密度は低く、力学応力は細い糸と比べて大幅に低いという問題がある。その理由は、クモから長い糸を採取しにくいところにある。また、集合体を構成する円柱状フィラメントを並べても、フィラメント相互の間隙をなくすことは不可能なところにある。 そこで、クモの糸の集合体の高付加価値化を狙って、タイル張りのように間隙のないクモの糸の集合体を作ることができれば、クモの細い糸と同様な特性が得られるかもしれない。特に、繊維間の隙間の軽減は、繊維同士が面で接触することから、弾性率の大幅アップにつながる。ここでは、現代科学では不可能と思われている繊維間に隙間のない繊維集合体を作ることに挑戦するのが本研究の目的である。 本年度における研究成果としては、まずは、オオジョロウグモの採集を行い、次にオオジョロウグモから100 cm長の糸束を作ることに労力を費やした。また、10,000本以上からなるクモの糸束を捩じる実験を行い、糸束の断面を電子顕微鏡にて観察し、隙間の軽減状態を調べた。その結果、捩じる前はクモの糸のフィラメントの断面が円形であったが、捩じることにより多角形に変化するなど断面構造が大幅に変化しており、隙間が軽減した構造が一部ではあるができていることを確認した。捩じり回数や温度湿度などで非線形の塑性変形の度合いが依存していることが分かった。しかし、今のところ、隙間のない構造変化が起こっているのは全体の一部にしか過ぎないレベルである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究としては、平成24年度の夏から秋にかけて沖縄では台風が多くてクモの採集が困難であったが、オオジョロウグモを一部集めることができた。クモは嫌がってすぐに糸を切るので、クモから1m長の糸を取り出すのに苦労した。10,000本以上のフィラメントからなる糸束を作り、それを捩じることによって、繊維間の隙間の軽減度合いを調べることにした。ねじる回数を変えながら、糸束を構成するフィラメントが円形から多角形に塑性変形することによって、全体として隙間のなくなる構造を電子顕微鏡にて確認した。進捗度としては順調である。
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今後の研究の推進方策 |
今まで、ねじりによってフィラメントが多角形に変形し、隙間が軽減できることを見出した。ただ、隙間の軽減は一部だけであった。 今後は、どのような条件であれば多くの箇所でフィラメント間の隙間が達成できるのかを調べたい。つまり、フィラメントが多角形になる条件を探るべく、ねじり条件や湿度条件などを考慮しながら、取り組んでいきたい。これらの実験を達成するためには、肝心のクモの糸が多量必要なので、今後も精力的にクモから糸を取り出すことにも力を入れたい。 ただ、生き物を扱うことから台風などの自然の脅威にはどうしても影響しがちである。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、オオジョロウグモおよびコガネグモをたくさん集め、それから糸を多量集める。このための打ち合わせ費用、採集費用、糸取り用の人件費と消耗品が研究費の多くを占める。クモの糸束を用いて、ねじり方を工夫して紐を作る。このための器具を購入する予定。できるだけ全体のわたっての隙間軽減法を探るべく、どれぐらいのねじる圧力であれば、多角形化して隙間が軽減できるのかを、温度および湿度条件を探るために研究補助員の人件費が必要である。また、学会発表費用も必要である。
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