研究課題/領域番号 |
24655105
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
大崎 茂芳 奈良県立医科大学, 医学部, その他 (90273911)
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キーワード | クモの糸 / 集合体 / 力学強度 / 線密度 / 繊維 / 断面 / 隙間 |
研究概要 |
現代科学では不可能と思われていた『間隙の多い集合体繊維を間隙のないパッキング構造の集合体に変化させる条件』をクモの糸束を用いて探るのが目的である。繊維の非線変形を作り出し、繊維間の面接触によるずり力のアップに基づいた結果、紐全体の力学強度アップを図るべく実験に取り組んだ。 オオジョロウグモは沖縄県で、コガネグモは高知県で採集した。多数のオオジョロウグモおよびコガネグモから人海戦術で牽引糸を取り出した。次に、牽引糸の集合体である糸束を作り、それをねじるなどの加圧における糸の本数やねじり方によるデータを整理し、コガネグモとオオジョロウグモのうち、どちらのクモの糸の断面が多角形(polygonal)になり易いのかを調べた。その結果、コガネグモには少し捕獲帯が混じっているが、伸びが著しく弾性に富むことが判明した。一方、オオジョロウグモの牽引糸は太くて均一な束を作成できることが明らかになった。 クモの糸を加圧することにより、繊維の非線形変形によって隙間を軽減する仕組みを調べるべく、繊維軸方向の弾性率のみならず繊維軸と垂直方向の弾性率を測定した。その結果、繊維集合体における繊維間の隙間の軽減は、軸方向と垂直な方向における弾性率の掛け合いを考慮することが非常に大切であることが明らかになった。なお、紐の断面における繊維の変形は、電子顕微鏡観察によった。 特に、繊維集合体における繊維間の隙間をどのように軽減すればよいのかについては、ねじり回数や湿度、本数などを考慮するとともに、紐の均一性を維持する方法を探索した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度は、台風の影響も少なく、しかも採集場所も変更した結果、比較的多くのクモを集めることができた。それらのクモから紐を作り、紐の力学特性および断面における繊維の変形状況と繊維間の隙間の形状を電子顕微鏡にて観察した。
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今後の研究の推進方策 |
クモの糸で紐を作り、ねじりの条件を変えることにより、いかに繊維間の隙間を軽減でき、しかも力学強度がアップすることができるかが課題である。ただ、クモの採集およびそれからの糸集めが大変なため、26年度には大量にクモを集めて糸取りを行い、紐を作る計画を立てている。特に、紐のストレス緩和を行い、紐全体の弾性限界値を上げることに焦点を当てた研究を行いたい。なお、繊維の非線形変形に対して、軸方向だけではなくそれに垂直方向における弾性率とのバランスから、隙間の軽減化のメカニズム解明に取り組みたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入したいものがあったが、これは次年度の回して有効に使用したいと考えた。 次年度において、クモの糸のサンプリング費用に充てる計画である。
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