研究課題/領域番号 |
24655109
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長谷川 靖哉 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80324797)
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キーワード | ナノ材料 / 錯体 / 希土類 / 光機能 / 磁気機能 |
研究概要 |
平成24年度までにテルビウムイオンを9つ有するクラスターの合成に成功し、その配位構造をFAB-MS測定およびX線構造解析により明らかにした。その研究成果を受けて、平成25年度では以下の検討を行い、優れた研究成果を得ることができた。 1)磁性評価:SQUIDを用いてテルビウム九核クラスターの磁性評価を行った。磁化率の温度依存測定から、これらのクラスターは反強磁性であることがわかり、その反常磁性の強さは配位子であるサリチル酸エステルのエステル部位の大きさに依存することが明らかとなった。このテルビウムクラスターの磁化率測定により、テルビウム間の磁気的相互作用が明らかになった。 2)光磁気測定:テルビウム九核クラスターをポリメチルメタクリレート薄膜に導入し、印可磁場1.5T下でのファラデー効果測定(各波長領域における偏光面の回転角度測定)を行った。この測定により、テルビウム九核クラスターは従来のガラス材料に比べて大きなファラデー回転角を示し、その回転角はエステル部位の大きさに依存することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究により、テルビウム九核クラスターの大きなファラデー効果発現が初めて明らかになった。このファラデー効果はテルビウム単核錯体では発現しないこともあきらかになった。 また、テルビウムクラスターの磁化率測定によりテルビウム間の磁気的相互作用が明らかになり、その磁気特性は配位子の構造で変化することができることも明らかにした。精密なテルビウムクラスターの設計が成功し、その機能が期待以上の効果を示したため、当初の計画以上に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度では、テルビウムクラスターの特筆すべき光磁気特性の機能を解明するため、具体的には以下の研究検討を行う。 1)ESR測定: テルビウムを含むクラスターはESR測定を測定することができないため、同骨格を有するガドリウム九核クラスターを合成し、光磁気機能の解明を検討する。具体的には、ESR測定の際に光照射を行い、ESRスペクトルの変化を計測する。 2)エステル部位の変化:エステル部位のアルキル鎖長を大きく変化させ、テルビウムの発光および光磁気特性計測を行う。平成25年度にテルビウムの配位構造とファラデー効果の密接な関係が示唆されたため、この構造をさらに変化した物質の合成と機能評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年3月10日から平成26年3月31日までに発注・納品した消耗品があり、その金額は14,702円となる。この金額が会計システム上で「次年度使用額」となっている。 次年度使用額14,702円は平成26年3月31日の時点で使用を完了している。
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