研究課題
平成26年度では、9つのテルビウムイオン特異的な有機配位子(不斉炭素を含むキラル構造の有機配位子、および長鎖アルキル基を含む有機配位子)から構成される希土類クラスターの光磁気機能評価を行った。不斉炭素を含むキラル構造の有機配位子に関しては、サリチル酸とキラルなアルコールとのエステル化反応によって、新規なS体およびR体のキラル配位子合成を行った。得られたキラル有機配位子と塩化テルビウムとの錯体化反応を行うことにより、キラル構造を含む希土類クラスターの合成に成功した。得られたテルビウムクラスターはCDスペクトルによりΔ体とΛ体を形成していることが明らかとなり、さらに円偏光発光特性を示すことも分かった。このキラル型テルビウムクラスターの光磁気特性(ファラデー効果特性)を評価したところ、R体のテルビウムクラスターとS体のテルビウムクラスターでは、その磁気光学定数(ベルデ定数)に変化が生じることが分かった。これは、分子性ファラデー材料において特筆すべき重要な成果である。さらに、長鎖アルキル基をテルビウムクラスターに導入したところ、系統的な光物性(発光物性)の変化が観測された。これは、テルビウムクラスター中のクラスター格子とアルキル部位による相互作用が影響していると考えられ、アルキル基の鎖長を変化させることによっても光物性が変化できることを初めて明らかにした。本研究により、分子性のテルビウムクラスターを詳細検討することにより、初めての分子性光磁気物質を提案することができた。分子による詳細な構造制御により、その光磁気機能を変化させることができることも明らかにした。これは新しい分子材料を提案する上で重要な研究成果である。
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