研究課題/領域番号 |
24655111
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐田 和己 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80225911)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 結晶工学 / 走査型トンネル顕微鏡 / 金基板 / 結晶 / 分子パターン描画 / ジスルフィド / 有機結晶 / 分子構造 |
研究概要 |
金線の先をバーナーでアニールすることにより(111)面を表出させ、これを基板として用いた。L-シスチン、ジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、ペニシラミンジスルフィドなどの様々な有機物を再結晶により単結晶を作製し、これを直接金基板に振りかけた。数時間静置後アルゴンガスの噴射により過剰の結晶を除いた後、金基板表面を走査型トンネル顕微鏡(STM)観察で評価した。 ジスルフィド結合を持つ分子(L-シスチンやジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、ペニシラミンジスルフィドなど)を金基板に接触させた場合、すべての分子で金基板上に分子の大きさに相当する高さの凹凸模様をSTMで観察できた。このことから、有機物の結晶を基板に接触しただけで基板上に単分子膜が形成されることを確認した。さらに、L-シスチンを用いた場合は、ジスルフィド結合が表出している(100)面の分子間隔と等しい0.5×0.9 nm間隔の凹凸パターンが観察された。またペニシラミンジスルフィドを用いた場合も同様に金基板上には結晶内の分子配列を反映した凹凸パターンが観察された。このことから、共有結合と同等の強さを持つ金-チオール結合によりジスルフィド結合を持つ分子の結晶は固体-固体接触により金基板に吸着されることが明らかになった。また、イオン結合のように強い分子間相互作用をもつ結晶の場合、結晶内の分子配列を維持したまま単分子膜として転写できることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金基板への一連の有機物結晶との固体-固体接触の実験において、金基板上に分子レベルの凹凸が観察されるのはジスルフィド結合を持つ有機物のみであり、金チオール結合が基板への転写に必要であることが明らかになった。さらにジスルフィド結合をもつ有機分子ではイオン相互作用がある有機物の場合にのみ、結晶格子に相当する間隔が分子パターンとして観察することができた。したがって、有機物の結晶構造を基板上へ固体-固体接触により、転写するための条件が明らかになりつつあると考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
結晶格子に相当する分子パターンが見られた有機物について、単結晶1つを用いて、直接基板に接触させ、有機物の結晶面の構造をそのまま転写できるかどうかを検討する。 また、有機物の単結晶を複数成分から構成される混晶を用いることで、分子を転写した後、基板との相互作用がない化合物の除去を検討し、基板上で分子一個レベルでのパターニングの可能性について検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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