研究課題/領域番号 |
24655112
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
村岡 貴博 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (70509132)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ポリエチレングリコール / ペンタエリスリトール / 凝集抑制効果 / タンパク質 |
研究概要 |
ポリエチレングリコールの分子構造を2次元、3次元的に構造化することで、通常の直鎖状ポリエチレングリコールとは異なる性質が現れるのではないか、と考え研究を進めている。その最初の例として、テトラエチレングリコールとペンタエリスリトールとを組合せ、三角形型に構造化した化合物に関して、タンパク質に対する凝集抑制効果について深い知見を得ることができ、論文で発表するに至った。特に、三角形型に構造化することで直鎖状のものより低い温度で脱水和する性質が産まれ、この脱水和した三角形型分子が、変性したタンパク質と相互作用していることを強く示唆する結果が得られた。これらの点が、通常の直鎖ポリエチレングリコールでは見られない凝集抑制効果を生み出している重要な要因であることが示された。また対照化合物として、同じコンポーネントとでできた直鎖型の化合物や、三角形を2つ連結した化合物、さらには二角形型の化合物も開発したが、これらはタンパク質に対する凝集抑制効果を示さないことが明らかとなった。脱水和温度がいずれも80度以上と高いことが、その原因と考えられる。 これらの結果から、ポリエチレングリコール誘導体の分子形状と物性、特に脱水和温度との間には関連性があることが明らかとなりつつある。またこのポリエチレングリコール誘導体の脱水和温度をコントロールすることが、タンパク質に対する機能を制御する上で有用であることが示唆され、これは今後研究を推し進める上で意義深い知見であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2012年度は、主に合成を中心とした計画を立てていたが、順調に進行したため、当初は次年度に予定していた物性評価やタンパク質に対する効果を調べる段階まで達することができた。その中で、脱水和温度とタンパク質に対する凝集抑制効果との関連性が示唆される結果が得られたことは大きな収穫である。次年度はその点に着目した効率的な研究が行えると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ポリエチレングリコール誘導体の脱水和温度をコントロールすることが、タンパク質に対する凝集抑制効果を発揮する上で重要であると考えられる。2012年度は、三角形を元にした構造化ポリエチレングリコール誘導体をターゲットとしていたが、次年度は異なる幾何学構造を有するポリエチレングリコールを開発し、形の変化で脱水和温度のコントロールを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該研究費は、2012年度において予想以上に旅費が少なく済んだため、その分を次年度に使用する計画である。 次年度では、2012年度に得られた知見を基に、そのさらなる理解と応用を目指し、新たなポリエチレングリコール誘導体の開発を行う。その合成開発のために80万円使用する。また得られた成果の発表と情報収集の目的で、国内外の学会に参加することを計画しており、そのために25万円使用する。またその学会参加費として15万円を使用する計画である。 次年度使用額は、今年度の研究を当初に予定よりも効率的に推進したことに依り発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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