平成25年度は、当初の計画通り結晶状態のナノ粒子を作製する手法の確立に重点を置いて研究開発を行った。それにより、液体二酸化炭素による溶解再析出を用いるのではなく、機械的粉砕機構に効率的なナノ結晶取り出しキャリアとして液体二酸化炭素を用いるシステムを新規に考案し、作製することで、効率的に薬剤のナノ結晶(結晶状態を保ったまま微粒子化)することに成功した。 また、無添加でナノ粒子化することで、それまでは実際にデータを取ることが難しかった、薬剤の飽和溶解度を向上させる(10%程度の過飽和溶解を起こす事)実験結果を前年度までに得ていたが、この点についても、過飽和溶解がどの程度の時間にわたって続くのか、再結晶過程で見られるような物理的ショック(主に温度)によって過飽和溶解が解消するのかどうかについて実験的に検討した。その結果、過飽和溶解は室温近傍において(粒子の比表面積や結晶状態によって影響を大きく受けるが)少なくとも6日は維持されること、また、急冷などによる温度ショックを加えても容易には解消されないことがわかった。物理化学の常識に再考を促す本現象の解明には、今後、より緻密且つ、多くの実験データが必要と考える。 今後の展開については、より大規模(大量に)無添加ナノサイズ化薬剤を作る技術(装置)を確立することで、過飽和溶解現象を踏まえた新しい製剤デザインにつながるほか、過飽和溶解ならびに結晶成長や粒子の熟成機構の理解に研究成果が役立てられると期待している。
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