研究概要 |
室温でリン光を効率よく発光する有機固体の創製は、励起三重項状態を効率よく生成する電子構造の設計に加え、濃度消光や熱失活が起こりにくい分子凝集構造の構築を同時に実現するクリスタルエンジニアリングが求められる学術的に極めて挑戦的な課題である。本研究は、水素結合やハロゲン結合可能な官能基を導入した1,4-ビス(アロイル)-2,5-ジハロベンゼンを設計・合成し、その固体発光特性や結晶構造解析を行い、室温リン光を発する有機材料の分子設計指針を確立することが目標である。今年度は、ジブロモテレフタル酸を出発化合物にして、まずこれに塩化チオニルを作用させて対応する酸クロリドへと導いたのち、続いてメチルメトキシアミンを作用させて、対応するワインレッブアミドを調製した。得たワインレッブアミドに、配位結合可能なアルコキシ基やアミノ基が4位に置換するフェニルグリニャール反応剤やハロゲン結合形成可能なピリジル基を有するグリニャール反応剤を反応させることにより、それぞれ対応する1,4-ビス(アロイル)-2,5-ジブロモベンゼンを中程度ないし良好な収率で合成した。合成した化合物のいくつかは、紫外光を照射すると、固体状態で青色ないし青緑色の発光を示すことを認めた。また、アロイル基の4位にメトキシ基やトリフルオロメチル基の置換する誘導体については、良質の単結晶を得ることができたので、X線回折による結晶構造解析に成功した。
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