本研究の全体構想は有機合成化学・構造有機化学に基づく機能性π電子系の創出をもとに、分子エレクトロニクス実現の基盤となる学術的知見を得ることである。この中で本研究では、単分子レベルでの素子機能化に注目している。具体的には、光電変換機能を付与した単分子素子材料の創出を目的としている。この目的実現に向けて、正孔輸送部位、電子輸送部位、金属電極と有機分子を接合させるアンカー部位を単分子に導入した化合物開発を行っている。これまでにチオフェン4量体、8量体を正孔輸送部位とした三成分導入分子の開発を達成している。得られた分子はいずれも有機溶媒に可溶であったため、単離精製は分取クロマトグラフィで行なうことが可能である。得られた生成物の基礎物性評価は溶液状態の電子吸収スペクトル、サイクリックボルタンメトリー測定、蛍光スペクトル測定で行った。その結果、本研究目的に合致した光吸収特性と電気化学特性を持つことが明らかとなった。さらに金基板への吸着能を明らかとするため、金表面上での単分子膜を作製した。サイクリックボルタンメトリーを用いて単分子膜の評価を行なった結果、期待どおりの吸着度と吸着能を有することが明らかとなった。単分子膜評価の検討にむけて、原子間力顕微鏡を用いた観察も行なった。また、単分子光電変換の観測に向けて連携研究者と光照射下での電流-電圧測定の予備評価を行なった。
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