研究課題/領域番号 |
24655125
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
津田 明彦 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20359657)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | フォトクロミズム / ナノマテリアル / 大環状マクロサイクル / 光異性化 |
研究概要 |
ナノサイズもしくはそれ以上の大きさを有するマクロサイクルは、クラウンエーテルに代表されるように、内部に分子を取り込むことで、様々な機能を発現出来る有用な超分子ユニットである。一方、物理的な刺激により、任意にナノ分子の情報・機能変換ができれば、分子マシンあるいはナノマテリアルとして大きな利用価値が生まれると考えられる。本年度は、光照射に伴いナノスケールの大きな構造変化を誘起できる新規マクロサイクルの構築を目指し、環状オクタピロール骨格にエチレンスペーサーを介してアゾベンゼンユニットを導入した化合物Az8Pをデザインした。アゾベンゼン部位がtrans体の場合、Az8Pは、八の字構造をとると考えられ、光照射によりcis体へと変換すると、ナノスケールの内部空間の形状・大きさが劇的に変化すると期待される。アゾベンゼン部位から色素部位へのエネルギー移動を抑制し、効率的な光異性化を目指すため、ピロール部位とアゾベンゼン部位の間にエチレンスペーサーを導入したAz8Pを新たに設計し、その合成に成功した。 Az8Pに対して、350 nmの光を照射したところ、NMRスペクトルにおいてcis体由来の新しいピークの出現を確認でき、積分比から、transからcisへの異性化率は33%であることを見出した。エチレンスペーサーを導入していない環状オクタピロールの0%に比べ、異性化率の大きな向上が見られた。また、詳細に解析すると、trans-trans体 : trans-cis体 : cis-cis体 = 51 : 32 : 17 (%)であり、trans-cis体よりも、cis-cis体の方が若干ながら構造的な安定化を受けていることが示唆された。今後はAz8Pの単離を行い、光異性化に伴う分子の動的挙動の解析、分子認識能の検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たに合成に成功した環状オクタピロールが、光異性化(33%)を示すことを見出した。アゾベンゼン部位から色素部位へのエネルギー移動を抑制し、効率的な光異性化を目指すため、ピロール部位とアゾベンゼン部位の間にエチレンスペーサーを導入することで、それが実現できたと考えられる。今後、この化合物の分光学的な性質を調査することによって、フォトクロミック機能の開発を進めることができる。
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今後の研究の推進方策 |
環状オクタピロール骨格内のピロール部位とアゾベンゼン部位の間にエチレンスペーサーを導入すると上記のような光異性化が生じることがわかった。しかしその異性化率が33%であったことから、ゲスト分子の添加など化学的なアプローチによって、その値のさらなる向上を目指す。環状オクタピロールの光異性化挙動は、NMRや吸収スペクトルによって詳しく解析し、またX線結晶構造解析によって、その光異性化前後の分子構造を明らかにする。光異性化により化合物の色変化が出ない、あるいは小さい場合は、オリゴピロール部位の共役構造を修正し、新たな化合物合成を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
合成実験に必要な実験試薬、ガラス器具、およびスターラーやポンプなどの消耗品の購入を行う。
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