研究課題/領域番号 |
24655131
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
川俣 純 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40214689)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 無機ナノシート / 無機層状化合物 / 粘土鉱物 / 高圧物性 |
研究概要 |
本研究は、①無機層状化合物の層間という環境が生み出す圧力場を定量的に理解し、②層間に取り込まれた有機分子に作用する圧力を自在に制御する方法論を確立すること、および、③高圧で顕著に生じる物性を、無機層状化合物の層間に挟み込むことで常圧の環境下でも実現できるようにすることを目的としている。 平成24年度は、無機ナノシートの層間に挟み込まれた有機物に作用する圧力の定量化、および圧力場の制御に関する研究を進めた。圧力をモニターする化合物としては、常圧では歪んでいるものの、圧力を高くするにつれて分子の平面性が高くなることが知られているビフェニルの誘導体を選んだ。ビフェニルは、分子の平面性が高くなると、可視光の吸収や蛍光の波長がレッドシフトすること、歪みに起因した赤外吸収モードが消失する。このビフェニルの特性を利用して、無機ナノシートの一種である粘土鉱物の層間に挟み込まれたビフェニル誘導体と、溶液状態でダイヤモンドアンビルセル中に封入した試料との分光学的挙動を比較することで、粘土層間に挟み込まれたビフェニルに作用している圧力を定量化した。その結果、粘土層間に挟み込まれたビフェニル誘導体は、1GPa程度の高圧の溶液中に存在するときと同様の平面性を取ることが明らかとなった。この知見は、X線回折測定により見積もった層間隙の大きさとも一致した。 次に、層間に挟み込むビフェニル誘導体の量、および粘土鉱物の層電荷を変化させることで、1分子に作用する圧力場の制御を試みた。その結果、この圧力場は0.5~2GPaの間で自在に変化させられることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画において、平成24年度は目標①無機層状化合物の層間という環境が生み出す圧力場の定量的な理解を達成する予定であった。実際にはこれに加え、平成25年度以降に達成予定の目標②層間に取り込まれた有機分子に作用する圧力を自在に制御する方法論の確立もほぼ成し遂げることができた。以上のように、当初計画を前倒しして順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
圧力場の制御方法として、当初計画したゲストの量、ホストの層電荷、共存イオンのサイズに加え、揮発性の低いDMSOなどの溶媒を層間に注入することも有効であることを見いだした。そこで、当初の計画に加え、溶媒の注入によりゲスト分子に作用する圧力場を制御する方法論の確立に向けた研究も進め、より高い次元で目的が達成できるようにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
ダイヤモンドアンビルを破損しない限り高額な物品はこれ以上必要としないが、ナノシートおよび層間に挟み込む色素の合成に必要な薬品、溶剤、ガラス器具等は購入する必要がある。また、分光学的挙動の評価に必要な光学部品も購入する。 当初の計画以上の成果が生まれつつあるので、それら成果を国内外の学会で積極的に発信していく。そのための旅費にも研究費を使用する。
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