本研究は、無機ナノシートの層間に取り込まれた有機化合物が、無機ナノシートの格子エネルギーにより受ける①圧力環境場を定量的に理解し、②圧力を自在に制御する方法論を確立すること、および、③無機ナノシートの層間に有機化合物を挟み込むことにより、高圧下に特異的な物性を常圧下で引き出すことを目的としている。平成25年度までの研究で、当初の目的は達成した。得られた知見に基づき、研究をさらに発展させ、無機ナノシートの層間環境を液体の注入/除去という外部刺激により変化させると、圧力環境場も変調でき、高圧環境場に特異的な物性と、常圧環境での物性との間を簡単にスイッチングできることを新たに示すこともできた。平成26年度は、無機ナノシートの層間環境に変調を与え、結果として圧力環境場をスイッチできる方法をさらに多彩にすることに取り組んだ。 まず、新たな外部刺激の方法として、指で押す程度の圧力に着目した。無機ナノシートの一種である粘土鉱物と、水溶性のポリマー、圧力応答性の物質との三元系を作製したところ、指で押す・試料を引っ張るなどの外部刺激により色調が変化する材料を新たに開発することができた。 また、これまで、層間環境を液体の注入/除去により変化させることが可能な系では、不揮発性の有機溶剤を注入/除去しなければ色調を安定に変化させることが出来なかった。そこで本年度の研究では、人体に無害で環境にも優しい水の注入/除去により色調が変化する系の創出にも挑んだ。その結果、圧力応答性の化合物の水に対する親和性を高めれば、水をかけるだけで色が変化し、水を乾燥すると色が元に戻る系が作製できることを見いだした。
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