研究課題/領域番号 |
24655132
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
舟橋 正浩 香川大学, 工学部, 教授 (90262287)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 液晶性半導体 / 強誘電性液晶 / 電荷輸送 / 異常光起電力効果 / 自発分極 |
研究概要 |
キラルなフェニルターチオフェン骨格をベースとした、強誘電性を示す液晶性半導体の合成と物性評価を検討した。 良好なホール輸送性を実現するため、分子内にターチオフェン骨格を組み込んだ。また、大きな自発分極を実現するため、電気陰性度の大きいフッ素原子をベンゼン環上に導入した。結晶化を抑制するため、アルキル鎖の末端に二重結合を有する側鎖を導入した。 この化合物は、139℃と124℃の間でキラルスメクティックC相を示し、それ以下では、高次のスメクティック相を示した。-50℃まで冷却しても結晶化しなかった。 二重結合をもたないアルキル鎖を側鎖として有するフェニルターチオフェン誘導体は、キラルスメクティックC相の温度範囲は10℃程度で狭く、室温では結晶化する。本研究で合成した液晶材料は、室温で高次のスメクティック相を示す。 三角波法により、キラルスメクティックC相での自発分極を測定したところ、100nC/cm2の高い値を示した。フェニル基に導入したフッ素原子のためであると考えられる。液晶相でのホール移動度をTime-of-Flight法により測定した。キラルスメクティックC相では、ホールの移動度は温度と電界に依存せず、3x10-4 cm2/Vsであった。 大きな双極子モーメントを有するにもかかわらず、キャリア移動度の電界・温度依存性が現れなかったのは、キラルスメクティックC相が強誘電相であるため、双極子モーメントが配向しており、状態密度(DOS)の幅を広げないものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、1年目に大きな自発分極を有する強誘電液晶性半導体を合成し、2年目に、異常光起電力効果の測定を検討する計画である。 本年度は、強誘電性とホール輸送性を兼ね備えた液晶性半導体の合成に成功した。 得られた液晶化合物のホール移動度はアモルファス有機半導体よりも一桁以上高い値を示している。また、自発分局は100 nC/cm2であり、通常の強誘電性液晶の中では非常に高い値を示している。 これらの物性値から、双極子モーメントが緩和しなければ、自発分極が形成する内部電界によって引き起こされる異常光起電力効果を観測できるものと期待できる。 研究成果は2件の国際会議、1件の国内学会、2篇の論文に発表されている。 よって、研究はおおむね順調に進展しているものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
合成した液晶性強誘電半導体の以上光起電力効果を確認するため、パルス電圧印加直後にパルス光を照射し、内部電界によるホール輸送の観測を検討する。 また、強誘電相での自発分極を緩和するため、分子運動を妨げることをねらい、アルキル側鎖末端にオリゴシロキサン鎖を導入した液晶化合物を合成する。また、ポリシロキサンの側鎖に、合成したフェニルターチオフェン誘導体をグラフトし、強誘電性液晶高分子を合成する。得られた化合物の自発分極、ホール輸送性を評価し、異常光起電力効果の測定を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
液晶化合物合成のための、試薬、ガラス器具、物性評価のための光学部品、電子部品を購入する。 研究成果発表のため、国際会議参加費・旅費に使用する、
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