研究課題/領域番号 |
24655135
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
正岡 重行 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 准教授 (20404048)
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キーワード | 金属錯体 / 再生可能エネルギー / 超分子 |
研究概要 |
本研究では、人工光合成のための特異な反応場の構築を目指し、金属錯体の二次元集積化に関する研究を推進した。集積化には、脂質二分子膜を用いた手法、および、分子間π-π相互作用を利用した手法の2通りを用いた。 脂質二分子膜を用いた手法としては、自己集合(親水-疎水界面の構築)に最適な脂質の選択、また、最適な錯体-脂質の組み合わせを引き続き検討した。金属錯体には、目的とする触媒機能を有する錯体に脂質二分子膜と相互作用可能な官能基を導入し、触媒の二次元系への修飾、および機能発現の可能性を検討した。 一方、分子間π-π相互作用を利用した手法としては、触媒機能を有する金属錯体としてパドルホイール型二核錯体を用い、4つのカルボン酸配位子に分子間π-π相互作用が可能な官能基を導入することによる二次元分子配列の可能性を検討した。その結果、相補的なアレーン-パーフルオロアレーン相互作用が金属錯体の二次元集積に有意な相互作用として機能することを見出した。二次元集積体を構成する金属イオンとして、銅、ロジウムなど複数の金属イオン種が利用できることも明らかにした。また、それらの二次元集積構造が共存分子(溶媒など)の影響を受けて大きく構造変化することも見出した。しかしながら、相補的なアレーン-パーフルオロアレーン相互作用を用いて構築された構造体は十分に安定ではないことが多く、触媒反応場としては用いるためにはより強固な相互作用による集積も視野にいれて研究をすすめる必要があることもわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、人工光合成のための最適な反応場の構築をめざし、金属錯体の二次元集積化に関する研究を推進した。その結果、金属錯体触媒の脂質二分子膜への複合化や、π-π相互作用による新たな分子集積手法の確立に成功した。その一方で、当初予定していた界面でのプロトン共役電子移動(PCET)現象について、あまり研究を進めることができていない。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、二次元集積体の構築、および、その二次元反応場への金属錯体触媒の集積に成功した。今後は、二次元配列された金属錯体に対する触媒機能評価、および、二次元反応場におけるプロトン共役電子移動(PCET)現象について調査する。特に、分子間π-π相互作用を用いた系に於いては、相互作用を強化する手法に関する再調査も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本課題では、金属錯体集積反応場を利用し、水を基質とする多電子酸化還元反応を行うことを目的とした。研究を進めるにあたり、用いている集積体の安定性がそれほど高くないことがわかり、当初の分子設計を修正する必要が生じた。そのため、平成25年度に予定していた研究計画「水の活性化を目指した金属錯体集積反応場の創製と機能評価」を26年度に延期し、研究費を有効に執行することにした。 平成25年度に計画していたが26年度に延期することにしたテーマ「水の活性化を目指した金属錯体集積反応場の創製と機能評価」の推進に本未使用額を用いる。集積体創製に必要な試薬、ガラス器具、および、触媒機能評価に必要な測定用消耗品を購入予定である。調査・共同研究・成果発表のための旅費、および論文投稿にかかる諸費用にも本経費を充てる。
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