研究概要 |
高難度の二酸化炭素を直接用いる有機合成反応の開発に先立ち、二酸化炭素と等電子構造を有し、取り扱いが容易なケテンを用い、ルテニウム錯体触媒存在下でのアルキンおよび一酸化炭素の触媒的分子間 [2 + 2 + 1] 共付加環化反応の最初の例を見出した。例えば、Ru3(CO)12 触媒存在下、ジフェニルケテンとジフェニルアセチレンとの反応を、トルエン溶媒中、一酸化炭素 20 気圧加圧下、160 ℃で 20 時間行うことにより、対応する 2-フラノン誘導体が収率 92% で得られた。Ru3(CO)12 錯体以外にも、0価のRu(η4-cod)(η6-cot) および Ru(η6-cot)(η2-dmfm)2 錯体 [cod = 1,5-cyclooctadiene, cot = 1,3,5-cyclooctatriene, dmfm = dimethyl fumarate] が高い触媒活性を示し、対応する 2-フラノンがそれぞれ収率 78%、69% で得られた。一方、2価のルテニウムカルボニル錯体として、[RuCl2(CO)3]2 を触媒として用いた場合には、目的とする 2-フラノンは全く得られず、ケテンとアルキンとの1:1付加反応が進行した分子量 372 の生成物が得られ、これは [2 + 2] 共付加環化反応による4員環生成物と考えられる。さらに本反応は、ルテニウム錯体触媒に特徴的な反応であり、Rh6(CO)16 や Co2(CO)8 等の他の遷移金属カルボニル錯体を触媒として用いた場合には全く進行しなかった。 本反応が進行したことは、より高難度のジイン、エンイン類と二酸化炭素との触媒的共付加環化反応や、二酸化炭素、アルキン、および一酸化炭素の触媒的 [2 + 2 + 1] 共付加環化反応が進行する可能性を示唆している。
|